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紅と白 ※


「大丈夫ですか?」


長身の男が屈んで私の顔を覗いていた。夢を見てると信じたい。
にゅっと、白い顔も覗いてきた。


「!?ぎゃーー!」
ゴツッ。


勢い良く起き上がったせいで白い顔と思いっきり額をぶつけた。
痛い。これは完全に夢でなく現実の痛さだ。

しばらく痛さで蹲っていたがふと、自分のいる場所が自分の部屋だと気がつく。


「…痛ぁ…あの、どうして私の家にいるんですか?」


思わず聞いてみた。


「…貴女が道の真ん中で倒れるものですから、鞄の中の手帳から住所を調べて、彼に貴女を運んで貰いました。」


彼、というのはあの白い顔のヤツですよね…。どうやら、危害は無さそうだな。


「さっきから、彼を見る度に悲鳴をあげてらっしゃいますが…、わかっていますでしょうか?彼が、私が用意した貴女の運命のお相手です。」



いや、いやいやいゃ、それは一番聞きたく無かった台詞ですよ、お兄さん。
何と言うことだろう。自分の運命の相手がこんなお化けだなんて、誰が信じるものか!せめて、人間を連れてきて欲しかったよ…。

チラリと白い顔のヤツを見てみる。血の気の無い、本当に真っ白な皮膚をしている。体は…男なのかな?顔からは性別は判断しかねますけど。あの体格は男ですね。あ〜、細めの、でもちゃんと筋肉のある…顔と皮膚の色さえ普通だったら好みの体型なんだけどなぁ。
とか、何とか眺めていると、白い顔のヤツは口の端をグイっと上げて笑顔?を見せた。……恐っ。

「あのぅ…これは何者何ですか…?」


思わず聞いてみる。すると、予想外の返事が返ってきた。


「…私たちの世界ではコクーン(繭)と呼ばれる、愛玩動物でございます。」


はい?愛玩動物?て、ことはつまりペットですよね?いくら運命の相手が居ないからって私はアナタの世界のペットを押し付けられたのですか!?

「ところで、さっきから言ってる、アナタの世界って何処なんですかぁ?」

「…魔界でございます。先刻、貴女の黒魔術による契約ににて参りました。確か、契約名は『運命の相手と出会う最終手段』注意書きには契約解除は無効とされていたはずです。」


なるほどね。そういうことですか。って、あの本、本物だったんだ!あぁ〜、今この瞬間に人生を悔やんだよ…。
がっくりと項垂れていると長身の男が一冊の本を手渡してきた。また、黒魔術の本ですかぃ?


「こちら、彼の取り扱い説明書です。まずは、彼に名前を付けて下さい。」


長身の男はニッコリ微笑む。私はというと、半ばヤケクソで取り扱い説明書を受け取る。


「じゃあ…、シロで。漢字で書いたら『白』。」

理由は白いからに決まってる。


「それでは、契約完了でごさいます。これから、愛のある素晴らしい日々をご堪能下さい。では、私は急ぎの用事がありますのでこれにて。」


長身の男はフッと消えてしまった。取り残されたのは、私と白。

果たして愛は育めるのか!?


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あきゅろす。
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