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雨空
紅と兎の夢



地面が血まみれになり、周りには屍ばかり。

どんよりと曇った灰色の空がこの光景には相応しい。

強い強いと噂のこの種族も、ただの弱者の噂でしかなかった。


『やはり同族でしか小生の渇きは癒せないのでしょうか』

ふう、とため息をついて屍となったものに番傘を何度もぐさり、ぐさり、ぐさりと突き刺す。
そのたびに地面は割れていく。

まだ新しい屍から、赤い、紅い血が吹き出し、突き刺したところに風穴が空く。

最早この星には、生ある者は小生しかいない。

屍に埋め尽くされた大地。
しばらくすればここは腐臭が満ち、死の星となり果てる。

血の匂いも、鼻をつんざく腐臭に変わることだろう。


「また派手にやったね」

『おや神威、久しぶりなのです』

長い三つ編みを揺らし、幼なじみがやってきた。
小生と似た、強さだけを求める化け物が。


「また強くなった?」

『さあ。ここも春雨でつぶすつもりだったのですか?』

「まぁね。何か珍しいものがあるとかだったんだけど、全部壊しちゃった?」

『多分』

「また面倒だなぁ。」

『なら宇宙海賊なんて辞めればいいのです』

よっ、と立ち上がり、唯一壊さずにいた宇宙船に飛び乗る。

「もう行くのかい?」

『血の匂いが腐臭に変わるのは嫌なのです』





ゴオ、と轟音が響き、宇宙船が浮かぶ。

去り際に神威がくすくす笑いながら言っていた。

「次会ったら、戦ろうね」

小生はにっこりと笑い、頷いた。









いくつかある内の、朧気な記憶。

小生の戦場の記憶は、全部全部、灰色。
つまらない、つまらない、つまらない。

『地球に、いますですかね。


小生の渇きを癒やしてくれる、強者』


血の命ずるままに、心の命ずるままに、小生は戦場に立つ。

それが、気まぐれに戦場を駆り、強さのみを求める、血濡れの灰猫。



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