雨空
化け物
「さっきの女…血濡れの灰猫か……?」
さっき、黒い番傘をさした小柄な少女が悠々と俺達を飛び越えていった。
ちらりと見えた灰色の髪、黒い番傘。
それらが、血濡れの灰猫を連想させた。
「トシ、何だその血濡れの灰猫ってのは」
「あァ…そんな有名ではねェが、気まぐれに戦場に現れ、どんな大金を積んでも絶対に雇えない、猫みてーな化け物、らしい。
灰色の髪に藍色の瞳、黒い番傘が目印らしい」
「なんでそんなに詳しいんですかィ土方さん」
「前しょっぴいた組織の奴らが拷問中ブツブツ言ってやがった。
灰猫さえ雇えれば、こんなことにゃならなかったのにーだとか」
「雇えないって分かってんのに未練タラタラですねィ」
一時話を中断して、ターミナルを見た。
すると、ちょうど黒い番傘が見えた。
「…化け物、」
勝手に口が呟いた言葉は、誰にも聞こえなかったようだった。
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