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雨空
2つめの兎の記憶

※「ぼくらの」とコラボさせてます
‐‐‐‐‐‐‐


『ジアース…』

ぽつり、とその語が浮かんだ。

確か、あれは去年のこと。


宇宙をさまよい続けていると、随分文明の発達した星があって、その星の変な機械の中に入ったら、見慣れない空間に居た。

中には、数人の子供と、2人の大人、浮いて喋る、変なぬいぐるみ。

番傘を閉じ、首に巻いていた布をとる。

「誰だお前?お前も契約したのか?」

『契約?何のことなのですか?』

ぬいぐるみに話しかけられた。
周りの子供達、といっても小生と年はあまり変わらないだろうが、彼らはびっくりしているだけ。

しばらくすると、コエムシというらしいぬいぐるみが何か分かったようににやりと笑う。


「お前、夜兎だな?」

『まぁ、そうですよ。コエムシは強いのですか?』

「オイオイ、勘弁してくれよ。
夜兎と、しかも血濡れの灰猫相手に戦うほど馬鹿じゃねーよ」

「コエムシ!何なのその子!」

「あぁ?化け物だ」

『酷いですね、会っていきなり化け物呼ばわりなんて』

これはジアースというらしい。
増えすぎた宇宙は、それぞれの地球をかけて戦い、そしてパイロットとしての役目を終えた者は、死ぬらしい。
そして、今のパイロットはキリエという少年。

が、彼は戦わない。
母親を自殺に追い込む地球が、守る価値などあるのか、と考えたらしい。

周りの子供やコエムシが何か騒ぐが、彼は黙ったまま。

『ふぅん、良いのではないのですか?』

「なっ何言ってんだよお前!
あたし達は今まで命をかけて戦ってきたんだ!
なのに…っ途中で現れたあんたにそんなこと言われたくない!」

おかっぱ頭の女の子が怒鳴った。
ふわふわ髪の女の子や長髪の女の子も怒鳴る。

すると、コエムシが止めた。

「やめとけ。血濡れの灰猫に楯突いてパイロットとして戦う前に死ぬんじゃねーよ」

「…っ血濡れの何とかは知らないけど!
どうするのよ!この戦い…っ」

『小生が戦いましょうか?』

「…はっ?お前は契約してないから無理だ」

『パイロットとしてではありません。直接、小生が破壊しますのですよ』

「なっ何言ってるの!?
戦闘機でも無理なのに生身の人間がやり合えるわけないでしょう!!」

「頭おかしいんじゃないのか!?」

「ふざけないでよ!」

喧騒の中、コエムシは少し考えるように黙り、

「いいぜ。」

とだけ呟いた。

次の瞬間、小生はジアースの頭の上に立ち、対峙する赤っぽいデカブツに笑みが零れた。



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