お題 ページ:5 なんであの時、嫌いなんて言ったんだろう。 嫌いじゃないのに――― ソウルと喧嘩をした。 きっかけは些細な事。鍋を焦がしてしまった事から色々我慢してきた事が、これでもかと言うくらい出てきて止まらなくなった。 引くに引けなくなった言い争いを終えるために、私は最後に言った。 「もういい!嫌い!」 胸がスッとしたけれど、なんだか後悔してる。怒って、そのまま部屋に行った後も、もやもやと考えていた。 私からあんなことを言った手前「ごめん」が言えない。 言えたらすっきりするのに… しばらくすると、ドアをノックする音が部屋に響く。 「マカいるのか?」 返事をしないでいると続けた。 「聞いてるだけでいい。さっきは悪かった。」 ドアを背にベッドの上で蹲っていたから気付かなかった。 「ごめん」 いつの間にか部屋に入ってきたソウルに後ろから抱き締められ、はっとする。 「なに言ってんの!私は嫌いだって、さっきから…」必死にもがいて腕の束縛から逃れようとした。 「嘘つき。嫌いだったら、無理矢理でも逃げてる」 そんなこと出来ないのを知ってて、そういうことを言うんだ。 「やっぱりマカじゃなきゃダメだ」 さっきまで意地張ってた自分が馬鹿らしい。 抱き締めてくる手に、自分の手を重ねて握り返した。 さっきまでのもやもやした気分はどこかに行ってしまい、温もりが背中を伝い心まで温かくさせる。 「私こそ、ごめん」 素直にさせてくれるのは、あなたの言葉。 偽ることは、もうやめよう。大好きなあなたには敵わないから。 [*前へ][次へ#] |