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◆Short Novels




「翠……泣いてる?痛いのか?…」
「ううん……へーきだよ……蒼介」

今、瞳に滲む涙は口調や考え方まで似せた慧が作り出した翠が流したもの?
感情がシンクロした昔のように、シンクロした翠のもの?
それとも、慧自身が流した涙?

自分の感情さえあやふやで、分かる事は今自分の身体が何を欲しているか。
蒼介が、何を求めているのか。


「っん……も、平気だから……蒼介、動いて、いいよ……?」
「っ!」
「ひぁぁ!……あ、ふっ……そう、すけっ…」


途端に耐えきれなくなったというように動き始めた蒼介の律動に、慧は余すことなく甘い声をあげる。
馴染んだとは言え、中にみっちりと埋まっている蒼介のそれが無遠慮にかき回され、出し入れされるたびに、熱い息が漏れる。


「あっ、はっ……そぅすけ……あ、んっ……」
「翠、ごめん、ごめんね……」
「……何で、謝るの?」


蒼介が謝る必要無いのに。
ただ慧は、本来自分が与えられるはずのなかったものを受け取っているだけ。
そしてそれを、翠として生きる事で誤魔化しているだけ。

望みは捨てていたのに、こうして大切な人の熱を受け取って、身代わりだけど大切にしてもらって、謝るのは慧の方だ。


「翠が、泣いてたから……」
「泣いて、ない……これは、気持ちいいから、だよ。蒼介」


だからお願い。悲しい顔をしないでくれ。
そんな顔を見ない為に慧は存在する事にした。

それなのに、蒼にそんな悲しそうな顔されたら、俺は何の為に自分を捨てたんだよ。
慧は蒼介の首に腕を回して、"慧"になっているかもしれない自分の顔を見せないようにする。


「だから、蒼介……俺の思考を奪って……」


"慧"にならないように、翠として俺をもっと抱いてくれ。


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