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その他
うたプリ 音トキ
『とーきや!誕生日おめでとう!』
電話越しの彼の声はもう何回聞いたことか。
それでも最近忙しくて声も聞けていなかったから機械を通してだが聞けたことにとてつもない安心感を覚えた。
「ええ。ありがとうございます。また貴方よりも年上になりましたね」
くすくすと笑いながら言うと電話の奥で悔しがるような声が聞こえた。
『ちぇっ!たったさっきまで同い年だったのにさ…』
「まあ仕方がないでしょう諦めなさい」
だって産まれたときから決まっているのですから。

――でも、もし。もしかしたらの話だが。私が産まれてくるのが一年遅くて。運命が変わっていたとしたら。
両親が離婚することも、HAYATOが生まれることも無かったのかもしれない。それにきっと…――。
「私が一年産まれて早かったとしたら貴方と会えなかったでしょうね」
自然と笑みが零れてくる。
再び笑ったのは向こうにまで聞こえていたようだ。
『ああっ!トキヤそれもう反則だから!』
きっと電話の向こうで赤面しているであろう彼は…。ふとここで疑問を覚えた。
なぜ息を切らせているのか。
「音也、なぜ息を切らせているんですか?まだマンションに着いてないのですか?」
音也の声を飲む音が一瞬聞こえた。
『う、うん。あとちょっとで着くよ。あ、もう前につくや』

外から足音が聞こえる。お隣さんはいまやっと帰ってきたのか。
大変だな。
――こんこん。
小さく戸を叩く音が聞こえ、不思議に思う。
インターホン使えばいいのに…。
「はい…」
ドアを開けるとそこには――。
「トキヤ。ただいま!」
にひひと笑う最愛の恋人でした。
「俺がプレゼント。なーんてね!」
ぎゅっと抱きついてきた彼からはいつもつけてる香水とじんわり滲む汗の匂いがした。

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あきゅろす。
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