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宝物
敦の赤ちんと仲直り作戦 紫赤
「うー・・・、赤ちんあついよ〜・・・」
ごろごろと赤ちんの膝に頭を乗っけて寝転がる。
今年の夏はとても暑い。
いつの間にか梅雨明けとやらが終わって、あっという間に夏がきた。
昼間の最高気温が35度くらいにまで達するここ連日。
さすがに犬の体には堪えるよ・・・。
「あーかーちーん!あーつーいー!!」
喚き散らしながら、赤ちんのお腹に頭をぐりぐり擦り付ける。
大人しく本を読んでいた赤ちんも、さすがに手を焼いたような顔をして、本を閉じるとオレを見た。
「うるさいぞ。暑いなら離れればいいだろう?」
「やーだ。赤ちんと離れたくないし」
赤ちんの腰に腕をまわして、ぎゅうぅっと抱き着く。
「離れたら死んじゃう」
赤ちんのお腹の感触と匂いがすごく好き。
息を吸って堪能する。
嬉しくて、オレの腰から生える犬の尻尾がへこへこ揺れた。
それに気付いた赤ちんが、いい子いい子とオレの頭を撫でてくれる。
そういうことをされると、とても嬉しくて気分が良くなる。
顔を上げて、赤ちんに上目を向けてみると、珍しく赤ちんは笑っていた。
口元を緩めて小さく微笑むその顔が、とても可愛い。

「赤ちん・・・」
「ん?」
「暑いからクーラー入れようよー?」
「断る」
ぷいっと赤ちんが首を振る。
猫の耳がぴくりと動いて、左右で違う方向を向いた。
「・・・どうして?」
「猫はクーラーが嫌いなんだ」
「そうなの?」
その問い掛けには返答なしに、赤ちんは何を思ったのかオレの犬耳を摘んで軽く引っ張った。
左右でそれぞれ摘まれて、興味津々といった様子で赤ちんはオレの耳を確かめるように弄ぶ。
「敦の耳は垂れ下がっているが、これでよく音が拾えるな?」
「普通に聞こえるし。赤ちんが忙しないだけじゃね?」
手を伸ばして、赤ちんの耳の根元に触れる。
案の定、赤ちんは目を瞑って、びくっと体を跳ねさせた。
「赤ちんの耳はいつも、ぴくぴくぴくぴくしてるけど。疲れない?」
赤ちんの耳を触るのは面白い。
少しだけ体を起こして、赤ちんの耳をぐにぐに弄る。
「・・・ぁ、敦。耳触るな・・・」
ぐにぐに ぐにぐに
「猫の耳って薄っぺらいのね。すごく無防備だし」
「んっ」
思い切って、親指の先を耳の中へ突っ込んでみると、赤ちんは体を小刻みに震わせながら弱々しくオレを見た。

耳の穴を塞いじゃってるから、音が聞こえないのかな?
不安そうにオレを見る目が、どこか媚びるように潤んでいた。
「・・・赤ちんさー。そういう顔されちゃうと、意地悪したくなっちゃうんだけどいいの?」
にやりと口角を上げて尋ねてみるけど、赤ちんにはオレが何て言ったのか聞こえなかったみたいだ。
「・・・ぇ?」
赤ちんが聞き返す。

そんな赤ちんの小さな口を噛み付くようにして塞いだ。
「んん、んっ・・・」
耳に親指を突き入れたまま、小さな顔を挟み込んで角度をずらす。
ちゅうすると、決まっていつも犬歯がぶつかる。
カチッカチッと鳴る音が耳障りで邪魔だったけど気にしない。
赤ちんのベロの下から溢れてきた涎が垂れないよう、舌で掬って飲み込む。

甘い。赤ちん、すごく甘い。

もっともっと赤ちんが欲しい。
身を乗り出して、口付けを深くしようとした時――
「ひにゃっ!?」
赤ちんが悲鳴を上げた。
びっくりして離れると、赤ちんがオレの耳をグイグイと力強く引っ張った。
「ちょ、赤ちん・・・引っ張らないでよ、痛いし・・・」
「い、痛い・・・尻尾踏むな・・・」
尻尾?
ゆっくりと視線を落としていって気が付く。
「うわ!ごめん・・・」
どうやら膝で赤ちんの尻尾を踏んでしまっていたらしい。
急いで退くと、赤ちんはオレの肩を押して距離を取った。
ついでに耳から、親指がスポッと抜けた。

「どうしてお前はいつもそうなんだ・・・?」
耳をぺたんと折り曲げて、大事そうに尻尾を撫でる赤ちん。
その前に正座をして、ひれ伏して詫びる。
「ごめんなさい・・・、悪気はなかったんです。怒んないで」
顔の前で両手の平を合わせて、赤ちんを垣間見る。
「耳も尻尾も、触られるの嫌だって言ったよな?」
「うー、だって・・・」
「だってじゃない」
ぴしゃりと言い放たれてしまうと、さすがに落ち込む。
さっきまで勢い良く振っていた尻尾も、元気をなくして萎れてしまった。
「・・・ごめんね」
もう一度、謝ってはみるが赤ちんは何も言わなかった。


取り敢えず、しょうがないから部屋を出た。
階段を降りて、お腹が空いたからご主人様のところへ行こう。
「おや、敦。どうしたの?」
「・・・お腹すいたし」
やれやれ、と笑ったご主人様は、お菓子をいくつか与えてくれた。
「ここ、涼しいし」
「クーラーが効いているからね」
なるほど。
部屋に戻りたくなくて、ご主人様の足下に腰をおろして擦り寄った。
よしよし、と上から頭を押さえつけられて撫でられる。
そういえばさっき赤ちんもこんなふうに撫でてくれたっけ。

「どうしたの?赤司と喧嘩でもした?」
「・・・なんでわかったの?」
「見ていればわかるよ」
ご主人様は優しい。
あの赤ちんが心を許しているだけはある。
動物であり、ペットでもあるオレ達は人間の主人がいないと生きてはいけないわけだけど。
それでも赤ちんって気難しそうなのに、オレがご主人様に対して不満を漏らせば(たいていは「おやつの種類が少ない」とか「躾が厳しい」とかだけど)、決まって必ず「違う」と言う。
「ご主人様はすごいし」
「なにが?」
ご主人様がしゃがみこんで、オレの顔を覗き込む。
「赤ちん、ご主人様に触ってもらうといつも喉ごろごろ鳴らすし。オレが触ると怒るのに・・・」
ははは、と笑ってご主人様はオレの髪を優しく梳いた。
「赤司はツンデレだから」
「オレにはデレてくれないのかなぁ・・・?」
「どうだろうね」
変なの。
くすくすと笑われると、本当なら嫌な気持ちになるはずなのに、ご主人様に対してはそうは思わなかった。

「オレ、いつも赤ちんにひどいことしちゃうんだ」
「そうなの?」
「うん。だって赤ちん見てると可愛くて、つい意地悪したくなっちゃうんだよ」
そう、可愛すぎる赤ちんがいけないんだし。
「ご主人様も、赤ちんにえっちなことしたいって思うの?」
「えっ!?」
ご主人様が目を丸くする。
「赤ちんのこと調教したりしてるの?」
「それはないけど・・・」
「じゃあいつも赤ちんに何してんだし」
「普通だよ。撫でてやったり、膝に乗せたり」
「乗せる・・・!」

あの赤ちんが、膝の上に乗っかってごろごろするってことか!
ご主人様の膝に乗る赤ちん。
きっと嬉しいのに黙ったまま、尻尾を揺らして耳ぴくぴくで、喉を鳴らして、ちょこんと座っているに違いない。
・・・いいなぁ。オレの上にも乗っかってくれないかなー。


部屋に戻ると、赤ちんのそばに近寄ってみる。
隣に座って、赤ちんの方を向く。
「仲直りしよう」
「・・・・・・」
「仲直りしよーよ!オレ、赤ちんの言うことなんでも聞くし」
しっ、しっと赤ちんが手を振る。
「あっちいけ」
ガーンッ
ショックすぎる・・・。
「赤ちんひどいし」
「ひどいのはどっちだ?人の嫌がることを平気でするのはお前の方だろ」
「だからごめんなさいって言って・・・」

あー、部屋が暑い。
おまけに色々考えなくちゃいけないから頭がガンガンしてきた。

「・・・赤ちん」
「・・・・・・」
「赤ちん、オレの膝乗らない?」
「乗らない」

やっぱりダメか・・・。
赤ちん膝に乗せて抱っこして、ぎゅうぎゅうすれば仲直りできるかなーって思ったのに。

仕方がないから、部屋の隅っこに移って黙ってお菓子を齧ることにした。
ぽりぽり・・・

「敦」
声を掛けられて振り向いてみれば、いつの間にやら。
赤ちんが目の前にいた。
「・・・なんだし」
「怒ったのか?」
「別に」
怒っているのは赤ちんじゃん。
なんだよもう。
「敦」
「なに・・・――」
もう一度名前を呼んで、赤ちんがオレの服を引っ張る。
すると、赤ちんはこちらに背を預ける形でオレの脚の間に体を置いて座り込んだ。
体育座りで座るオレの、脚と脚の間にある赤ちんの小さな体。
胸に預けられた真っ赤な頭の猫耳が忙しなく揺れ動いている。
「勘違いするなよ」
「へ?」
「僕は本当に心を許した奴の膝にしか乗らない」
「んー?」
「お前の膝にはまだ乗らないからな」

ツーンッと顔を背ける赤ちんがとてつもなく可愛い。

「・・・うん。いいよ、それでも」
後ろから、赤ちんの首に腕を絡めて抱き着いた。
「『まだ』ってことは、いつかは乗ってくれるってことでしょ?」
「・・・・・・」
「でも変なの。えっちする時は赤ちんいつも喜んで乗ってくれるのに・・・いたっ!」
調子に乗ったら、ガブッと腕を噛まれてしまった。
赤ちんの歯、地味に痛い。歯型がついちゃうじゃんか。

まだまだ部屋は暑いけど。
クーラーのない部屋は地獄みたいだけどさ。
赤ちんがそれが良くて、そうしたいって思うならいいよ。

赤ちん大好き。



――――――――――――――
めたせこいあのまさいさんからいただきました!
ああああ!猫耳赤司さま…!美味しいですぅぅ(^q^)
私なんかが相互初とかなんだか申し訳ないです…が、これからもお願いしますね!


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