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黒バス
好きと嫌いの境界線 紫氷
わからない。
好きと嫌いの境界線が理解できない。
わからない。
曖昧すぎるその境界線はバカな俺には不安定ですごく難しかったから。


わかりたくない。
好きと嫌いの境界線を理解したくない。
わかりたくなかった。
曖昧すぎるその境界線を理解してしまうともう戻れないとわかっていたから。


「…室ちん。」
冬…といっても暦の上では春になりかけている三月の終わり頃のことだった。
静かな部屋の中でアツシの小さな声がポツリと漏れた。
「なんだい?」
自分では小さく呟いたつもりでも部屋の壁に反響してとても大きい音に感じた。
「俺、好きと嫌いの境界線、よく分からないんだ。けど室ちんは多分好きな方だと思う」
なぜいきなりそんなことを言い出したのかは解らないけれど、とりあえず笑いかけた。
「Thank You.アツシ。俺もアツシのこと好きだよ」
もちろん『友達として』だけど。
アツシはきっと俺のことを恋愛対象として見ている。
気付いていた。ずっと前から。

でも俺は俺の内側に他人を入れるのが嫌で。
作り笑いを、化けの皮を、剥がされるのが嫌で。
アツシを…拒み続けた。

「室ちんさ」
アツシがまたポツリと漏らした。
「どうした?」
今度はひどく弱々しく響いた。
「ずっと作り笑い…しなきゃダメなの?」
俺は言葉を失った。
バレていたのか。化けの皮が。
アメリカの汚いとこを見て育ってきた俺には作り笑いなんてもう呼吸と一緒。無いととても困る、俺が生きるためにはこれが必要だった。
「…ダメだな。これは俺に絶対に必要なものなんだ。これが無いと俺はどうやって生きていけば良いのかもわからなくなる」
俺が言った言葉はアツシの口の中に吸い込まれた。
「―――ッ!」
アツシは捨てられた子犬のように眉を下げて言った。
「それじゃあもっと心の底から笑って見せて。俺を騙せるくらいに」
嗚呼、作り笑いは卒業しなきゃ。

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