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黒バス
紫赤の日
紫原敦はずるい人間だ。
いつも甘えて猫のように擦り寄って来るくせに急に甘やかす側の大人になるのだ。
「赤ちん?どした?」
今だって考え込んでいる俺の体を包み込んで、大きい手で頭をわしゃわしゃと撫でている。
「いや…なんでもないよ」
んー本当?なんて聞きながら目を覗きこんでくるなんで…こんなことされたら恥ずかしすぎて倒れそうだ…!

甘やかすのも上手い敦は俺によくお菓子を分けてくれる。
「赤ちん!これ美味しかったからお裾分けだし!」
差し出してきたのはいちごドロップ。
「あんね、これ赤ちんの目にそっくりだなーって思って無意識に買っちゃったの。そしたら美味しかったんだ〜」
にっこりと笑いながら一粒取り出して電灯に向ける。
「ほら、キラキラしてて綺麗でしょ?」
はい、あーん。と言われ口元に運ばれたそれを口に含むとふわりと香る苺の薫り。
「……美味しいな」
もごもごと口の中で転がしているとその様子をじっと見ていた敦が耐えかねたように言った。
「うー…やっぱりまた食べたくなってきたし…赤ちん、それちょーだい!」
おもむろにキスをされ口に残っていたドロップを拐っていった。
「ごめんねーそれが最後の一個だったんだ…」
「構わないよ。だってまた買ってきてくれるだろう?」

やっぱり嘘だ。冗談だ。
敦は甘やかそうとして甘えてしまうタイプだ。
――でもそれが敦だな。
自然とこぼれた笑顔は誰に見られるわけでもなく飴と一緒に融けていった。

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