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俺的野菜の食いかた 美猿
「さーるー!パン買い行こうぜー」
八田は毎日なぜか俺に声を掛けてくる。
今はもうずっと腐れ縁のせいでいつも一緒にいたからっていうのはわかるけど、昔はなんでなのか全くわからなかった。
「八田、うるさい。…準備するからちょっと待って」
でも八田に絡まれて嫌な訳じゃないからこうして今もつるんでいるんだろう。
クラス違うのにわざわざ来てくれるのは八田くらいだし。

購買でいつもの菓子パンを俺は買う。たまにはハンバーガーとかも惹かれるがレタスが入っている時点で即却下だ。
八田は購買のおばちゃんが毎日に日替わりでお勧めしてくるパンを買っているからこれといって好き嫌いはないらしい。
パンを片手に屋上まで移動する。

「あー…なんで屋上ってこんなに遠いんだよ…」
購買は屋上に一番遠いところに位置しているため毎日行くのは少し面倒。
「知るかよ。でも教室で食べんの嫌じゃん。女子はうるせーし、男子走り回ってるし」
ゆっくりとした足取りで屋上へ向かう。
「まあそうなんだよな…」

やっとの思いで屋上に着くとまず鍵を閉める。
前にバカップルが来ていちゃいちゃしはじめてから習慣になった。
「ずいぶん寒くなってきたよなー」
八田が手を吐息で温めながら地面に直接座る。
「まあな。10月後半はこんなもんだろ」
俺も地面に座り込み、ビニールから買ってきた菓子パンを取り出しかじった。
「…猿っていつも同じ菓子パンだよな。たまには違うの食えよ。ほら!」
俺が食べている様をじっと見ていたと思えばずいっとサンドイッチを差し出し言い放つ。
差し出されるそれには堂々とレタスとトマトが挟まっていた。
「いや、大丈夫だから。野菜嫌いだし」
そっぽを向いて野菜を視界に入れないようにしてもう一口。やっぱ甘さ控えめのこのミルクパンは好きだ。
「野菜食わないからそんなひょろいんだよ!」
「べつにチビに言われたくねーし。むしろ八田こそこれ食べれば?」
どうしても食べさせたいのか八田が迫ってくるが軽く受け流し逆にミルクパンを勧めてみた。
「チビじゃねえよ!ただ牛乳が嫌いだから伸びるのが遅れてるだけだ!伸び始めたらお前より高くなるからな!」
そう叫んだあと急に静かになった八田。やっと静かに飯が食えると思った瞬間名前を呼ばれ、振り向く。
「ん、やた!?あ…やぁ!」
いきなりキスをされ口の中になにか押し込まれる。
きっと野菜なんだろうけどちゃんと噛み砕かれてるからそのまま飲み込んでしまう。
――ごくっ。
「やっと食ったな」
ニカッと白い歯を見せて笑うとまあ自分の食事に戻っていった。
「童貞のくせに…!馬鹿美咲…」
小さく呟かれた一言は八田に聞かれることなく寒空のした溶けていった。

あれ、俺この食べ方だったら野菜食えるんだ…。
そんなこと考えていたら急に熱くなった顔を押さえ俯くしかない伏見に八田は首をかしげるしかなかった。

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あきゅろす。
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