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人を繋ぎ止める方法 秋伏
ちゅっ。
キスを一つ。背中に落とす。
ちゅっ。ちゅっ。ちゅっ。
何度も何度も丁寧に。
「伏見さん」
俺と同じくらいのデカさのやつを後ろから抱き締めてキスを落とす。
「んっ」
たまに噛んだり強く吸ったりして跡を残す。
その度に秋山は少し擽ったそうに笑う。

――わかってるから。
こいつはこの行為にどんな意味があってやっているのかをわかってるから笑う。
こうしないと繋ぎ止められなくて怖いってわかってる。
徴は犬に付けるリードみたいなもの。俺から離れないようにするものだって。……実はこんなものなくたって平気なことも。

ある程度徴を付け終わると向かい合って抱き合う。
なにも話さないでただ抱き締めあう。
「……」
「……」
部屋のなかはとても静かだった。
微かな吐息しか聞こえない。
この空間が好きで好きで仕方ない。
自分のことをちゃんとわかってくれている人。
その人と静かに鼓動を合わせて、お互いに融け合っていくような感覚が堪らなく愛おしい。


俺が徴をつけるようになった理由。
それはセプター4に入ると決めたときまで遡らなければならない。
薄っぺらい笑顔を張り付け宣言する。
「美咲ぃ?俺はセプター4に入ったんだ」
「だからお前とはおさらばだなぁ」
「まあお前には“尊さん”がいるから平気だろうけど」
路地裏につれてきた美咲に吠舞羅を抜けることを伝えた。
これはある一つのけじめでもあり、覚悟でもあった。
「お前が吠舞羅の徴を胸に刻んでいる限り!俺はお前を許さない!」
許さない?何を言っているんだ。許さないのはこっちの方だ。
嗚呼、でもそうか。徴がついている限りは逃げられない。
徴は首輪。逃げられないように繋いでおける。
それじゃあ、俺は徴を消そう。
「……お前の徴が汚れちまったなぁ。美咲ぃ」


そこからあとは記憶がない。
消したから。
今の俺の隣にいるのは秋山であることに代わりはないし。
「………秋山、好きだ」
いまならちゃんと笑えるかな。

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