雪屑のエスカレーター ▽ 「あの忍足さん。今回の件で大変お世話になったので、何かお礼をしたいのですが」 すると、忍足さんは「せやな…」 と呟いてしばらく考え込むように眼鏡をかけ直すと 「……ほんなら、名前で読んでくれへんか?」 「へ?名前ですか?」 私の質問に忍足さんは頷き 「苗字で呼ぶと、何か他人行儀やろ。津軽さんと俺は今日から岳人繋がりの友達になってくれへんか?」 ちょっと予想外の提案に戸惑いながらも、忍足さん…侑士がそう言うならばと私は頷いた。 「これからも、よろしゅうな#七美ちゃん」 「はい、侑士…さん?」 さすがに呼び捨ては、言いにくくて「さん」をつけると 侑士…さんは、何が面白かった笑い始めた。 「あははっ、くく……別に呼び捨てでエエねんで」 「あ、エッと…はい。」 侑士の笑いが止まったところで、改めて侑士に向き直り 「こちらこそ、よろしくお願いいたします。侑士」 そう言い終わると、私達は今朝がたのように笑い合った。 ただ変わったことが有るとしたら、友達になったのと名前呼びになったこと しかし、私達が笑い合う影で既に大変な事が起こり始めていた。 2014/11/9[Sun] [*前へ][次へ#] |