[携帯モード] [URL送信]

雪屑のエスカレーター
▼向日



七美が倒れて運ばれたと跡部から聞いた。
俺は思わず保健室に向かっていた。

保険医に挨拶を適当に済ませて、本題を口にする。

「津軽が倒れたと聞いたんですけど」

「ええ、そうよ。貴方は津軽さんの友達?」

俺は頷くのに少しためらったが、「はい」と返事をする。

保険医は俺の返事に対して

「あのカーテンの向こうで眠っているわ」

と言い椅子から立ち上がってドアの方へと向かう

そして俺の方に振り返り、「用事があるから、少し保健室空けるわね」と言い保健室を出ていってしまった。


残されたのは俺と七美だけ、少し気になって
カーテンを開けて入ってみると、顔色が少し悪い七美がベッドで眠っていた。

だが顔色が悪い以外にも、七美は土埃が所々付いていた。

嫌な予感がよぎって、少し悪いとは思うが近くに有った腕の袖を捲る。

袖の下には痛々しい痣が出来ていた。

最近、七美がよく教室を出ている事は知っていたが
まさか、また虐められていたとは

しかし俺に何ができるのか?

七美から離れて、声冴えも掛けてやれない今七美を救う手だてなんて無い


ただ今できる最大限で、
眠っている七美の頬にある土埃を払った
久しぶりに触れる七美は冷たくて
このまま消えてしまうんじゃ無いかと思うくらいに、儚い存在に思えた。


「………七美」


久々に呼ぶ名前がいとおしくて

でも俺は目を覚ました七美に接する勇気はなかった。


保険医が戻ると俺は、その場を去った。




2014/11/23[Sun]





[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!