雪屑のエスカレーター
▽
「何が?」
表情を曇らせて、落ち込むような声音
「お前さ、俺らが優しくする度に辛そうな顔するよな。いじめられている合間は無表情な癖して」
「多分、急に変わったから……今までそういう人が居なかった。それに岳人はどうして私に構うの?」
どうして気にかけるの?
もう私は一人じゃない、氷帝の皆やクラスメイトもいる
それでも前よりも岳人は、私に構ってくれている。
「……それは。心配だからだ。」
「……でも、それが怖いよ」
私達はしばらく黙り込み、その場に立ち尽くした。
長い沈黙に耐えきれ無かったのか岳人は鞄を背負い直して
「ごめんな変な事聞いて、俺先帰るな」
気まずそうに言い放ってから早足で歩き去っていった。
私はと言うと、その場に立ち尽くしたまま、ぐしゃぐしゃな頭の中を必死で整頓していた。
今まで私の心に踏み込んでくるのは瑠樹だけだった。
今は色々な人が心に踏み込んでくる、皆は優しくて、でもその優しさに反比例して私の心に雪みたいな罪悪感が降る
そして岳人に私は甘えている
嫌われたくないと思っている……あの人だけには憎まれたくないと、そう思い始めている。
夢の中で偽物の岳人に嫌われたときを思い出すと、あの優しさを失う事が苦しいと感じた
深く絶望して全てが怖かった。
はじめから優しくされなければ良いと思えるくらいに。
矛盾している
優しくされたい、けど優しくされたくない
私は変なんだろうか?
2014/9/13[Sat]
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