雪屑のエスカレーター
▽
その日の放課後。
向日さんと他愛もない会話をして一緒に帰っていると、向日さんは何か思い付いたように話しかけてきた。
「なぁ津軽、他人行儀ぽいから、名前で呼んでみそ」
「え?、でも今のが慣れているから良い」
た、確かに向日さんとは仲良くなったけれど
今まで他人を名前で呼ぶ事が無かった私はかなり緊張した。
「俺は呼べるぜ、なぁ七美?」
「ふぇ!?」
な、名前で呼ばれた
向日さんが呼んだ、呼ばれたし私も呼ぶしかないか
「が……岳人」
私が意を決して名前を呼ぶと向日さんは、とても嬉しそうに笑ってから私の頭を撫でた。
「ありがとう、七美」
今更ながら岳人は私と年は同じだけど、お兄ちゃんみたいな存在だと思う。
だけどこの優しさに浸っては駄目だと
私の奥底から警告音が鳴り響ていた。
岳人には申し訳無いけど、まだ人の優しさに私は完全に馴れきってはいない。
優しくされると酷く怯えてしまう
それを知られたくなくて、私はぎこちないかもしれないけど微笑んで答える。
「うん」
私が笑うと、岳人は笑う。
これで言い
貴方は私の闇を知らなくて良い
私が傷付くと
何故か岳人は傷付いた表情をするから
2014/7/5[Sat]
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