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雪屑のエスカレーター



向日さんに助けられた。
人に初めて助けられた。

色々とテンパりながらも向日さんは、私を助け様としてくれている


目の前の事が夢じゃないかと思ってしまうほど
この状況に現実味を感じなかった。


でも、向日さんのジャージを被された瞬間

自分や瑠樹とは違う臭いに包まれて、
ようやくこれが現実だと
何故か実感してしまった。

それを実感すると自然と私は向日さんに

「あ、ありがとうございます。」

と言っていた。


今私は、嬉しい?のだろうか…

私の中で何か不思議な気持ちが溢れてきた。

「お、おい。どうした!?」

「えっ?何がですか?」


向日さんが血相をかいて私に声をかけてきた。

何かあったのだろうか?

「えっ?…だってお前泣いてるから」


向日さんに言われて
慌てて頬に触れると、本当に涙が流れていた

どうして涙か出てくるの?
悲しくないのに

「どうして?」

戸惑う私に、
向日さんの手が頭にポンと置かれる。

「……っ?」

「よく頑張ったな津軽。お前はスゲーよ」

頑張った?
本当に!?


初めて瑠樹以外に
初めて他人に認められた気がした。




今日も私の心の中で雪が降る
でも、今は今だけは
降り積もる雪が温かい
そんな気がした。








2014/6/16[Mon]

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あきゅろす。
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