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雪屑のエスカレーター
▼向日



七美を部屋に連れていき、何とか寝かせた。

家に付く前なんか七美はフラフラで、ほとんど引きずって家に送り届けていた。

このまま家に帰っても良かったけど、
七美の様子がさすがに気になって
俺は七美の目が覚めるまで、七美の隣に居ることにした。

とりあえず、冷凍庫に有った氷を枕にして
七美を見守った。

そして一時間がたった


「………っ」

俺が見守るなか、七美が目を覚ます。

「七美っ」

まだ熱は、下がっていないようだが
さっきよりかは、顔色が良くなっていた。

ぼんやりとした表情で、俺を見る七美

熱のせいで意識が、ハッキリしていないようで
俺の呼び掛けにも答は、返ってこない。

しかし消え入りそうな声で、七美が何かを呟いた。

耳をすますと、七美は


「岳人は優しいから、私を放って置けないんでしょ?」

「……七美!?」

熱で錯乱しているのか
ぼんやりとした声で、七美は言い続ける。

「私が…可哀想だから、岳人は優しいんでしょ?」

だんだんと泣きそうな声になっていく七美

これは七美の本心なのか?
今まで言えなかった、言葉が出てきているのか?

ただ俺は黙って、七美の言葉に耳を傾けた。

「もう、大丈夫…だよ。気紛れとか、哀れみで私に優しくしなくても」

「………っ」

七美は、俺が傷付けていたのか?

ファンクラブの女子達よりも
何よりも七美を苦しめて、俺が中途半端なせいで

多分、七美は意識はハッキリしていない状態に有るのだろうが

七美の言葉は、きっと本心だろう

今まで離れて居たのに、急にまた優しくされたら
混乱するし、
気紛れと言われても哀れみで、
七美の側にいると、思われても仕方がない

俺は七美を傷つけたんだ

俺が居たから、ファンクラブからも苦しめられて


だから、七美
俺は…お前が好きだから

お前から……離れるよ。

ちゃんとケジメを付ける。


このまま俺が居ても、
仕方がないと判断した俺は

七美の頭を最後に撫でて

「……七美、ごめんな。もうお前を苦しめないから」

そう一言謝って、七美の家を出た。



2014/11/24[Mon]






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あきゅろす。
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