特別記念小説
十万HIT記念短編小説
「……」
ファルドは空を見上げて黙っていた。何となく見たい気分だったから、仕事を投げ出してボーっとしている。
「何してんだファルド…」
「ん?」
横を見るが誰も居ない。視線を下に向けると、ヴィータが呆れた表情を向けていた。何をしているかと聞かれても答えが浮かばない。
「なんだろうな?」
「……」
「いや、そんな非難の目を向けられても困るぞ」
ため息を一つ吐くと、ヴィータも同じように空を見上げた。
今日もミッドチルダの空は青く晴れ渡っている。
「……いい天気だな」
「そーだな。…初めてあたしらが出会った時みたいな天気だ」
「……あまり思い出したくない事言うな」
ファルドが初めてなのは達と出会ったあの日。その時から何かが変わった。
どちらか分からないが何かが変わった。
「…アタシには守るモノも沢山あるしな」
「はやてか?」
その問に、ヴィータは首を振る。
「はやてだけじゃない。なのはもだ。……後、ファルドも」
「…一杯あるな」
「ああ。だけど、アタシはすっげー幸せだ」
「それは良かったな」
ファルドは頭を撫でるが、ヴィータは嫌がって離れてしまう。
「撫でんな」
「悪かった。…そんな一生懸命なヴィータも、俺が守ってやる」
「なに言っ……て……」
そんな事しなくても大丈夫だと、断ろうと顔を向けたヴィータが固まる。
はやても、恐らく機動六課メンバー全員が見る事が難しいファルドの心からの笑顔。
青空を背景にした、優しくて直視する事が出来ない程の穏やかな表情。
顔を真っ赤にしたヴィータは何も言うことが出来ず、ただその笑顔に釘付けだった。
「俺が守りたいのは機動六課全部だ。はやてもなのはもフェイトも、皆」
そこで一度区切り、ヴィータの頭を再び撫でる。今度はくすぐったそうにして離れようとしない。
「…だから、ヴィータも守ってやる」
「……さりげなく頭撫でんなよ」
「嫌なら止めるぞ?」
「……イヤじゃねーです」
「そうか」
両手でファルドの手を捕まえると、しっかり頭に当てる。
捕まりながらも、楽しそうにヴィータの頭を撫で続けた。
「あのーラブラブ中悪いんですがファルド一佐、お仕事着々と溜まってますよ?」
「のぎゃあ!?クルヴィス!?お前いつからいた!?」
「えー…頭撫でようとして嫌がられた辺りから」
「……ヴィータ。アイゼンで頭かち割れ、俺が許可する」
「ああ任しといてくれファルド…」
「ちょっと待ったぁ!少しは…!ってジャケット装着済み!?」
「光になれぇぇぇぇぇっ!」
「ぅぎぃやぁぁぁぁぁっ!一佐の馬鹿ぁぁぁっ!」
※クルヴィスはとても酷い状態になったのでお見せ出来ません。
そんな平和な昼下がりの出来事だった。
「…いや、平和じゃな……バタリ……」
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