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特別記念小説
四万HIT記念短編小説
〜死闘!枕投げ大会〜



「枕投げやりたいッス!」
 ファルドがディードの部屋で寝た次の日の夜、ウェンディが突然言い出した。

「枕投げか〜、折角やからファルド君も混ぜてやろ」
「そうだね♪じゃあ呼んで来るよ」
それから数分後、なのはがファルドを引きずって食堂に戻ってくる。
連れてこられて何が起きるか分からず、困惑しているのを余所に枕が渡されていく。

「…枕?」
「枕だよ?」
「何が始まるんだよ」


『第一回!枕投げ大会〜!ルールは至って簡単、枕を投げて相手を倒して一人になったら優勝!』

「景品はあるッスか?」

『ファルド君で!』

「待てやこらぁ!俺の自由は一切無いのか!?」
「無いと思うよ」
「諦めて下さい」
 オットー、ディードの追い討ちで更に凹むファルド。手に持った枕を思い切り握りしめて意地でも優勝する事を誓った。

『魔法、ISも許可!ただし威力は最小限に留める事!デバイスも使ってええけどバリアジャケットは駄目やでー』

「マジかよ……」
はやてからの使用許可に全員の戦意が高まる。

「レイジングハート」
「バルディッシュ」
「レヴァンティン」
「グラーフアイゼン」
「クラールヴィント」
「マッハキャリバー」
そして静かにデバイスを手にするパジャマ姿の隊長と守護騎士一同。

そこで気がついた事があった。そう、全員の狙いが全てファルドに向いている。
つまり開始の合図と同時に防御しなければ確実に自由は無い。

『ほんなら行くで!レディー………ゴォー!』

「ケルベロスゥゥ!!」
《Blade Storm》
全方位から飛び掛かる枕を魔力の衝撃で落とし、すぐさまファルドは食堂を出ていって逃げる。
それぞれが枕を持ち直し、真っ先に追い掛けていく。



――二階・右廊下

「逃がしちゃ駄目だよ?レイジングハート」
《Yes.master》

「なのはさん、ごめんなさい!」
階段から飛び出したスバルがなのは目がけて枕を投げる。
廊下では避ける手段が無いので防ぐしかない。

「スバル?」
「わわ……」
あっさりバリアに防がれた枕。なのはが反撃にとアクセルシューターを放ち、避けた所へ枕を投げる。
 だがスバルも避けてからすぐにシールドで枕を弾く。

「うん、いい反応だね」
「あ、ありがとうございます!」
「だけど油断は駄目だからね」
「え?」
外したアクセルシューターが一発、スバルの後頭部に当たる。突然の一撃に転けた瞬間なのはが枕を投げた

バスン

「あぅ!?」
「スバル、リタイア♪」
「ぅぅ……」
 敗者は大人しく自室に戻るというルールに従い、枕を持ってスバルは戻って行く。

「隙ありー!」
「今度はヴィータちゃん!?」
アイゼンで打ち出された豪速球枕。
凄まじい勢いのソレをバリアで防いで壁に背を預ける。

「もー、いきなり何だからー!」
「うっせー。コレならなのはに勝てるかもしんねーんだから覚悟しろ!」

「えい」

ボフ

意気込むヴィータに当てられるディエチの枕。
頭に枕を乗せたヴィータは固まった。


「ごめんなさい」
「うぅ…油断した…」
枕を回収したヴィータも部屋に戻っていった。
残されたディエチとなのは。

「まただね。ディエチちゃん」
「うん……今回は、負けない自信がある」
「じゃあ、いくよ…!」
 廊下に飛び出したなのはが見たのはヘヴィバレルに枕を装填して構えているディエチの姿だった。

「え?え、え〜〜〜!?」
「シュート」
ドカン。ヴィータの枕なんか足元に及ばない速度でなのはに直撃する枕。
当てられて悔しそうにしながらもなのはは部屋に戻っていった。

「うぅ。あんなの反則だよ〜…」
「やった」
ディエチはガッツポーズをとるが、階段の上から降り注いだ枕に気付かずリタイア。
階段の踊り場にはオットーが立っていた。

「うん、予定通り」
「駄目だったか」
さして残念そうには見えないディエチは枕を持って部屋に戻る。
目的はなのはであり、ゆりかごの仕返しが出来たので満足だったのだ。

階段から降りて枕を持ったオットーが周囲を警戒する。人は見当たらないので大丈夫かと思った瞬間、頭上から枕が落ちてきた。

ポフ

「………」
見上げるとシャマルの魔法、旅の鏡がありそこから手が出ている。
一番奥の階段からシャマルが姿を現して顔の前で手を合わせた。

「まあいいけど…」
いつもの無愛想な表情で部屋に戻るオットー。
すぐに枕を拾いに廊下を進むシャマル。

「ふふ♪これなら優勝も夢じゃないかも♪」
と、浮かれていた時である。

バフッ

頭に枕が当てられた。振り向くとディードが枕をシャマルに振り下ろしている。

「リタイアです」
「そんな〜…」
涙声のままシャマルも部屋に。残されたディードは三階に上がる。




――一階・中央廊下

「はぁあっ!」
「くっ!」

ガキン。ガキン。……枕投げであるはずなのに響く金属音。
フェイトとシグナム、二人の片手には枕がしっかり握られている。

「ふっ、また腕を上げたようだなテスタロッサ」
「まだシグナムには届かないよ…」

「今ッス!」

ボスッ。

ライディングボードで廊下の上空を飛ぶウェンディがフェイトに枕を当てた。

「テスタロッサ!?」

「隙ありっ!」

ベフ。

それと正反対からエアライナーを走るノーヴェがシグナムに枕を当てる。

「二人共リタイアッス〜♪」
 その一言にガックリうなだれるフェイトとシグナム。集中し過ぎて気付かなかったようだ。
それぞれ枕を持って次は誰を狙うかを考えていると、天井から枕が振ってきてノーヴェに乗せられる。

ポス。

「あー!セインずるいッス!」

「隙を見せるなウェンディ」

バズゥン!

「うぎゅっ!」
チンクの豪速球枕がウェンディにHIT!
セインはそのまま撤退していく。

「うう、チンク姉酷いッス…」
「いーから戻るぞウェンディ」
「悔しいッスー!」
ノーヴェ、ウェンディが退場。そしてセインの残した枕を持ったチンクが廊下で立ち往生していると、同じくらいの背丈でリインが通路に出てきた。
両手でしっかり枕を持っている。

「む、リイン殿か」
「あ…チンクちゃんですぅ」
両手の枕を構えるチンク、それに対して蒼天の書を構えるリイン。

「む。リイン殿、やる気か」
「もちろんです!」
両者が睨みあい、緊張が高まる。






――三階・左廊下


「ちぃっ!」
 ツインブレイズがファルドの目の前を掠めていき、再び振り下ろされる。
体を捻り避けた瞬間、すぐに後ろへ飛ぶ。

「中々上手く避けますね」
「当たり前だ」

二人揃って枕を構える姿は間抜けである。

(後何人だ…少なくともディードはここで潰す)
などと真剣に考えているファルドだが、背後からの気配に気付く。
ディードが振りかぶり、枕を投げた。

それと同時にジャンプすると、ボスン。という音と共に床から出てきたセインに枕が当たっていた。

「あうっ」
「そんな…」
反撃としてファルドがアンダースローでディードに枕を投げる。しかし逆に受け止められてしまう。
 セインから枕を奪い、ファルドは突っ込んだ。ディードが再び枕を投げる。

先程よりも速い枕。だが、避けずに跳躍したファルドが枕を足に当てて蹴りで相殺する。

「悪いな」
《Strike Burst》
威力の無くなった枕にケルベロスを当てて二つを吹き飛ばしてディードに当てる。着地と同時に走り、枕を回収して階段を降りていった。

「やっぱ凄いね…ファルドって」
「そうですね…」
残された二人も自分の部屋に戻る。


残り

チンク、リイン、ファルド、はやて。

三階から二階、二階から一階に来たファルドは廊下を歩き、慎重に進む。

「ていっ!」
「ふっ!」

「……」
声が聞こえてきたのでそちらに足を運ぶ。通路の壁に背中を預け、見つからない様に廊下を覗く。

そこではチンクとリインが枕を投げ合っていた。
外した枕をいそいそと拾いに行く姿が微笑ましい。

しかし、そんな光景に和む暇はなく、ファルドは息を潜めてあるチャンスを待った。

「むぅ〜…!」
「ぬ…」

「行くですよ、チンクちゃん!」
「行くぞ、リイン殿!」

二人が枕を振りかぶった瞬間ファルドは廊下に身を踊らせて走る。
気付いたチンクが動きを止め、リインの投げた枕にまず一つを当てた。

気付かないリインにファルドは枕を軽く投げて当て、その直後スライディング。

「甘いなファルド殿」
「どっちがだ?」
ニヤリと笑うファルドにチンクは枕を投げる。無論、反撃の手段は無い。
しかし、ファルドは滑っていく体を回転させると落ちている枕を掴む。

「むっ!」
その上を通るチンクの枕。だが、ファルドが投げるまで時間があると思ったチンクだったが枕が飛んできて直撃した。

ボフン

「油断大敵ってな」
「うう…ファルドさん酷いですぅ!」
「知るかぁ!こっちの身にもなれっ!」

「くっ、まさか姉が…。だが流石はファルド殿だな。枕を投げずに撃ちだすとは」
「戦いは頭次第だ。さて、残りは誰だ…?」
リインとチンクも枕を持って撤退。

「そうだ、ファルド殿。この枕をセインに返しておいてもらえるか?」
「分かった」
枕を二つ持ってとりあえず食堂に戻ったファルドの目に入ってきたのは、枕を持ったはやての姿だった。
しかも夜天の書とシュベルトクロイツを持っている。

「ふっふっふ…。残ったのはうちとファルド君だけや」
「……へぇ」
最後まで残っていた事に驚きながらもファルドは生返事を返す。

「悪い事は言わないからさっさと降参してくれ八神」
「お断りや」
「分かったぁっ!」
拒絶の返事を聞いた瞬間ファルドは枕を全力で投げた。

「甘いでファルド君!既に予想済みや!」
テーブルの上を飛ぶ枕をあっさり避けるはやて。夜天の書のページがバラバラと捲られていく。
 止まった瞬間、はやての周りに魔力結晶が四つ現れた。

「最小限アーテム!」
「ちっ!本気か!」
即座にテーブルを倒し、盾にして身を隠す。
急激に気温が下がり、床が凍っていく。

「ケルベロス!」
《Straight a Shot》
 テーブルから身を出して走りながら威力を限界近くまで押さえた魔力弾を連射する。
これらもはやてはあっさり防ぐ。だが、拡散した魔力が煙を巻き上げて視界を塞ぐ。

「もしかしてコレが狙いやったんか!?」
「その通り」
足払いを掛けられたはやてが転けた。その前にはファルドが枕を構えて立っている。

「ファルド君…うち、か弱い女の子やで?それにとどめ刺すん?」
冷や汗を流すはやてが潤んだ瞳で見上げながら命乞いをした。
それに笑顔で返すファルド。

「だったら魔法を射つな」



ぽふ…

呆気ない枕投げ大会終了の合図。

優勝はファルドに輝き、めでたく自由を手に入れた。


「…そういえば返しにいかないとな」
チンクから預かったセインの枕を持って部屋に向かう。

「入るぞー」
中からの返事を聞かずに入り、ベッドにうつ伏せのセインに近づく。
振り向いた顔に枕を押しつける。

「返す」
「〜〜〜〜!」
枕を振り払ったセインの顔が真っ赤だった。
だが、ファルドはそのまま部屋を出ていく。

「セイン。おやすみ」
「え?…あ、うん…おやすみ、ファルド」



めでたく自由なファルドは医務室のベッドで一晩を過ごした。

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あきゅろす。
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