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Strikers Fire -If Story-
十三ページ
「……? 何かまた騒がしいな」
 退室した足で医務室に向かう。シャマルが一人退屈そうにしていたがファルドの姿を見て頬を綻ばせた。

「あら、ファルドさん。何かご用でしょうか」
「ああ、ちょっと……出来れば胃薬か何かもらおうと思ってな」
「どうしてです?」
「もしかしたら俺は自分から寿命を縮める事になりかねないからだ」
 両手のチョコを見て「まあ……」とわざとらしく驚くと、シャマルは医療棚を探し始める。

「モテる隊長さんは大変ですね」
「それだけ信頼されてると思うと、嬉しくはあるんだけどな」
「もう、そうじゃありません。女の子の気持ちっていうのはもっとストレートに受け取る物なんですよ!」
「そ、そうか……」
 女心の何たるかを熱く語られそうになる前にファルドは薬を受け取ってすぐ医務室から逃げ出した。

(うーむ、しかし参った……)
 ナンバーズ、カリム、はやて……いずれも全てチョコだ。ファルドはどう消費していこうか考える。少なくとも寝る前とかは駄目だ、そうなると昼のうちに。昼食で食後に少しずつ食べていくしかないのだろうか──などと算段をつけていく。

「あ、ファルドさん。すごい量だね……チョコレート」
「なのはか。まぁな、どうしろってんだこれ……全部食うけど」
「大変じゃない?」
「そうだな、普段あまり食べないからなこういうの……。どこに行ってたんだ?」
「うん、ちょっと本局の方に」
「司書長にチョコ渡しに行ってたのか」
「私がここにいるのもユーノ君のおかげだもん。やっぱりちゃんと感謝の気持ちは渡しておかないとね」
 どちらともなく、二人の向かう先は一緒だ。肩を並べて歩く。

「安心して、ちゃんとファルドさんの分も作ってあるから♪」
「そうか」
「ごめんね。そんなに沢山あるのに」
「一つや二つ増えても今さらだ」
「じゃあ、少し時間いいかな?」
「ああ、別に構わない」
 いつものように変わらない。
 ファルドはいつものように接して、なのはもいつもと同じように付き合って。ほんの少しだけ、いつもより甘い香りをさせながら。

「ファルドさん、どうかなこれ」
「これはまた随分と……」
「ちゃんとチョコレートだよ?」
「だからって1ホール丸々作るか……」
「気合い入れてたらいつの間にかこんな風になっちゃって……」
「頑張り過ぎだ。無理するなよ」
「それ、ファルドさんに一番言われたくない言葉だよ」
 ケーキを切り分けてなのはが一つおまけを乗せ、ファルドに小皿を渡す。

「はい。ファルドさん」
「……ん?」
「どうかした?」
「……なのは、これ」
「上手くいったと思うんだけど、どうかな」
 立体的に仕上げた、ひし形のチョコレート。ファルドは自分の左手と見比べる。

《そっくりですね、主》
「そうだな、ケルベロス」
 なのはの顔を見て、それからフォークを持ってケーキに手を合わせた。

「それじゃ、いただきます」
「はい。どうぞ」

 その日の二人はいつもより、本当に少しだけ甘い香りに包まれていた。

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