Strikers Fire -If Story- 五ページ 管理局のエース達があられもない酔っ払いになる宴会とは場所は打って変わって、一件の屋台。 「…隊長」 「なんだ」 「……美味いっすね、おでん」 サイア、カイツ、ラテル、ゼイムス、無衣が肩を並べておでんを食べていた。ちまぢまとした新年会ではあるが、まだ前座である。 「はふはふ……熱ッ!?」 「どうやって食べているんだゼイムス準尉は…」 ウサギが卵を食べる様は一種のホラーに通ずる物がある。店のオヤジも冷や汗垂れ流しながら引きつった笑みを浮かべていた。 無衣は水割りで酔いながらはんぺんをつついている。 「…白い」 「はんぺんだからな」 「…三角い」 「はんぺんだからな」 「…美味い」 「はんぺんだからな」 「…熱い」 「お前もう黙ってろ」 わんわんおー! 五人の夜は静かに過ぎて行く。 場所はまた戻り、管理局の新年会。ファルドはいい加減場の混沌具合に嫌気が差し始めていた。 「悪いなのは、ちょっとトイレ行ってくる」 「うん、早く戻って来てね」 「あー…努力する」 しらふなのがもう指折りぐらいしか居ない中で、ファルドは男子トイレに入る。 「はぁーあ、全く…新年会だからって羽目外し過ぎだろ……」 用を足して、手を洗う。 ──おぅえ〜〜…… ごじゃー 「…………」 トラウマになりそうな声がトイレに響く。気になってファルドは閉じた戸を叩く。 「大丈夫か…?」 ──ああ、どなたか知りませんが酔い止めなどないですか? 「…悪いな、持ってないんだ」 ──そうです…ぐへぇ〜〜 ごじゃー……ガチャン 戸から出てきたのは道化師。腹を押さえてふらついていた。 「すいませんねぇ…」 「いや……」 「うぷっ…」 「吐くなよ…って、おま…!」 「おかえり、ファルドさん。あれ? 上着…」 「あぁ、脱いできた」 戻って来たファルドはため息を吐いて腕を捲ると、箸と小皿を構える。 「なのは」 「な、なに?」 「食うぞ」 「…………」 なのはは何も言えなかった。ファルドの目が本気だったから。一心不乱に料理を平らげていく姿ですら様になるのだから不思議で仕方ない。 ちなみにロアは既に潰れてフェイトの膝の上でダウン状態。それでも満面の笑みでフェイトは酒を飲んでいた。絶対に絡まれたくない、ファルドはそう強く願いながらとにかく食った。 「ジャグの野郎何してやがんだぁ? 戻ってこねーなぁ…」 「どうしたグレイ、もう限界か?」 「しゃらくせぇ! まだまだよ!」 店の裏にあるゴミ箱に頭から叩き込まれた道化師に気付く人間はもう居ない。お酒って怖い。 [*前へ][次へ#] [戻る] |