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Break Force特別編:God Breaker
八ページ

 マスターは欠伸をしながら堂々と夜の街を歩く。依頼書を月明かりと街灯で照らしながら読んで首を慣らしていた。
 夜が明けるまでに残り三枚の依頼を片付けなければいけない。何しろ期日ギリギリの物ばかりを押しつけられた。今の今までサボっていたのが原因でもあるが仕事仲間に少しくらい働く姿勢を見せてもらいたい。

 それから数時間後、夜中の三時過ぎに漸く全部終わらせたマスターは心底疲れてギルドに戻ってきた。宴会終了後のような静寂の中で、やはり店の主人はコップを磨いている。

「ただいま」
「おう、戻ったか」
「やぁっと終わった…水くれ…」
 依頼書をカウンターに乗せて、主人が受け取った。代わりに水の入ったコップを差し出す。ここの主人とは初めて来た時からの付き合いだ。今じゃ憎まれ口を叩き合うほど仲が良い。

「いい加減仕事してくんねぇかなここの奴ら……」
「お前さんが甘やかすからだ」
「残念な事にプロは仕事選べないからな。なんか簡単なのでも紹介してやれよ、酒代もバカにならないだろうが」
「ん、まぁな? そいつを取り戻せるだけ優秀なのが居るから何とかやってけるんだぜ、此処は」
「ハイハイ働きますー、馬車馬の如くー。くそったれめ」
やけになりながら水を飲み、空のコップを突き出す。無言でお代わりを注ぐと差し出した。
 一息つくギルドに、もう一人の依頼屋が戻ってくる。特に疲れた様子もなく、カウンターに座ると依頼書を渡した。

「おかえり、お嬢ちゃん。仕事は上手くいったかい?」
「ええ、特に問題なく終わりました。すいません、水ください」
「あいよ」
 マスターと同じように水を注文。喉を小さく鳴らしながら空にすると、コップを差し出す。それにお代わりを注いだ店の主人は二人を見比べた。

『何だよ(ですか)』
「いや、お前さん達似てると思ってな」
『どこが!』
「そっくりじゃねえか」
思わず口を閉じ、恨めしく互いを睨む。コップの中身を一気に煽り、同時に『お代わり!』まで見事に一挙一動外さない。
店の主人は苦笑しながら水を注ぐ。ぶーたれる顔までそっくりだ。

「ところで、嬢ちゃんは何処に泊まるんだい? ここの利用は初めてだろ。なら寝床ぐらい貸すぜ」
「こんな酒臭いギルドの部屋に泊めるのかよおやっさん」
「何ならテイクアウトか?」
「ホテル紹介、後はご自由にってとこが関の山だ。お持ち帰りは勘弁だ」
 バキャン。と、すぐ隣でコップが破片となって握りしめている少女が無言で指から水滴を垂らしていた。

「すいません。コップ割れちゃいました」
あくまでも、笑顔で。にこりと満面の笑みで店の主人に謝罪する。
二人が女は怖い生き物だと再認識した瞬間だった。

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