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Break Force特別編:God Breaker
六ページ
 実の娘からの非難の眼差しをマスターは鼻で笑って流した。最低? 最悪? そんな言葉は褒め言葉にしかならない。依頼屋に所属している人間が崇高なはずがない。信々深いわけがない。神どころか人間にすら見離されているのだから。

「ありがとよ、褒め言葉だ」
 そういう意味を込めて、マスターはそう皮肉気に笑った。それをリスティはどう捉えたのか、食って掛かる。胸倉を掴むと、睨む。
手を振りほどき、呆れた吐息を漏らす。

「行儀悪いんだなお前、まったく親の顔が見てみたいぜ」
「じゃあ鏡でも見てきてよ。すぐ見れるわ」
「生憎と洗面所に用はなくてな」
 売り言葉に買い言葉、のらりくらりと言葉を避けるマスターに苛立ちを募らせるリスティが拳を作ったところで今まで見守っていたリョウカが口を開いた。

「マスターさん、リスティちゃん!」
 思った以上に大声で。身を強張らせるリスティと、何食わぬ顔の家主の視線を受けても毅然としている。頬を膨らませていた。

「そこで喧嘩されたらお掃除が進みません! ですから──その……ど、退いてください……」
 段々と尻すぼみになるのは自分がどんな相手にどんな口を聞いていたのか自覚し始めたからである。自分のメイドからの進言を聞いてマスターは気だるげに返答しながら一度は出てきた犬耳を撫でて階段を上がっていく。

「あの、リョウカさん……ごめんなさい」
 思った以上にリスティが落ち込んでいた。慌ててそれを慰めていると玄関のインターホンが鳴った。そう言えばロイが来ると言っていたのを思い出す。



「邪魔してるぞ」
「おう。それで、何の用だ?」
 片手を挙げての気さくなやり取り。定番の仏頂面でロイは重々しく息を吐いた。その様子から察するに大分深刻なようだ。

「……ああ、実はな──買ったばかりのサスペンス小説のネタバレをされた」
「よし、帰れ。今すぐ荷物まとめて中央貿易都市に帰れ」
「俺にとっては今後の生活に深刻な支障をきたす問題だぞ」
「しらねぇよ帰れよ何なんだよ! そんな理由で学校サボってんじゃねえ!」
「お前が言うか」
「悪いがもう過去形だ」
 ついでに言えばマスターの場合は私情ではなく仕事である。

「問題なのはそこじゃない。ネタバレをしてきた相手だ」
「俺なんて実の娘に人生のネタバレされてんだぞ」
「……そう考えると俺はまだマシな方だな」
 この場にロンがいたのならツッコミは避けられなかっただろう。だが残念なことにロイはスルーした。

「すまない、くだらないことで手間を取らせた」
「まったくだ」
「学校行ってくる」
「おう、行って来い」
「…………なにか肝心な話を忘れている気がするんだがなんだろうな」
「知るか!」
「ああ、そうだ。思い出した。そのネタバレをしてきた相手というのが“介入者/イレギュラー”という事だ。現代ではなく未来のな、一応管理者でもある俺に接触と警告をしてきたがまぁ取るに足らない事だ。忘れろ」
「ちょぉっと待ったぁ、そっちがメインだろうがお前よぉ! どういう判断基準で前置きと本筋が逆になってんだよ!」
「あとがきが本編と言われるようなラノベ作家だっているんだぞ」
「知らねえよ。そもそも読まねえし」


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あきゅろす。
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