Break Force特別編:God Breaker 五ページ 春ヶ岬学園の昼休みは静かな物だった、珍しく。 「ッ……」 「ロン、大丈夫?」 「ん、そんな心配しなくても大丈夫。少し口の中痛むだけだから」 朝から湿布やら何やら貼ったロンは知り合い達から心配されていた。ティナも心なしか不安そうにしている。ロイは相変わらずの無表情だ。 「ロン君、本当に大丈夫?」 「マスターに比べれば全然余裕」 「……ロン、比較対象間違えてないか」 「そんな気もするけど何も言わないでくれないか」 「そうだな……」 「それにしても」 姉のお手製弁当をつつきながらティシャが肩の力を抜き、周りを見渡す。心なしかいつもより屋上で食べる生徒の数が多い。 「たった二人、いないだけでこんな静かなもんなのね……」 「なんかちょっと、落ち着かないけどね。……マスター、大丈夫かな」 「大丈夫だろう。明日には帰ってくるんじゃないか」 「本当? ロイ君」 「……多分な」 ──いざというときは、自分が借りを作るだけだ。 ロイは多く語らず、惣菜パンを水で流し込む。スロウドがサボりと聞いて密かにガッツポーズした今朝から上機嫌だ。 「はぁ。何はともあれ、暫く街の中は出歩けないな……」 「そうね。また昨日の奴に絡まれたりしたら……」 「…………」 「どうかしたのかロイ?」 「いや──なんでもない。気のせいか」 そんなはずもないが、ロイは遥か遠方を見て、それから自分の左手首に巻いた鎖のブレスレットを暫く見つめる。 (……余計な仕事を増やして) 内心毒づきながらも、静かな昼食を再開した。 何事もなく過ぎる時間はあっという間で、放課後。 「リンファ」 「なんですか、ロンさん?」 「今日も部活?」 「はい。今日は部費の話で……」 「あ、あぁそうなんだ……」 マスターの義妹であるリンファに夜遅くならないようにと一言注意しておく。 「ロン、真っ直ぐ帰るのか」 「いや。少し保健室で湿布張り替えてくる。先に行っててくれ」 「……それは構わないが」 「なにか問題でも?」 「……中身だけじゃなく遂に肉体も年老いたのか。気苦労多いのは本当に大変だな」 「そうだな、そう思うなら少しくらいお前も俺の手助けしてくれてもいいんじゃないか?」 「めんどい」 「はよ帰れ!」 ロンに怒られ、下駄箱に向かう。図書委員会の業務は担任に予め予定があると言って休む。 「あ、ロイ君」 「今日は二人か」 「うん」 「……昨日のロンの件もある。一応護衛するが……いいか?」 顔を見合せ、それでもティシャは少し不安そうな表情だ。ロイの実力はあまり知らない。それでも他三人と一緒にいるのだから腕前の方を期待してもいいだろう。 「私、アンタの事はよく知らないけど……頼りにしていいのね?」 「ああ。二人の傍にいた方が手っ取り早い」 『?』 二人は首を傾げながらも、無口な護衛に命を預けた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |