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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
十ページ
「…………」
誰もいない青空を眺める。背後で剣を鞘に収める音を聞いて振り向くと、シグナムが怪訝そうな表情をしていた。

「何故逃がした。追う事も出来ただろうに」
「今の状態で追い掛けたところで返り討ちになるだけだ。負傷した奴もいるしな」

「……」
なのはが手を借りて立ち上がる。

「大丈夫か?なのは殿」
「うん、私は大丈夫。皆は大丈夫かな?」
「アタシらも伊達じゃないッスよ。この通りッス」

良かった、と一言だけ呟く。

「とにかく、今は撤収して怪我の回復だ。後救援部隊に要請して、怪我人の護送と周辺の警戒及び調査。ま、何の手掛かりも出ないだろうがな」
キッパリと指示を出したファルドの表情が歪む。

左腕を押さえて握りしめる。無愛想な表情の歪みはすぐに戻り、普段の顔に戻った。

「…とにかく、行動は速くした方がいい」
 ふと、景色が逆転する。突然の事で頭の処理が追い付かず、ファルドはとりあえず体の要求する睡眠に就く。後の事はなのはに全て任せて。











――研究所施設

戻って来てからすぐにノルドは二体の整備に入る。

「お帰りノルド。性能の程はどうだい?」
「上々かな。ま、破壊されなかっただけマシかな」

そんな二人を余所にロアはラボを去った。
その背中にドクターが声を掛けるが無視される。

「…何かあったのか?」
「いや、特には……。ファルドが生きてたくらいだよ」
「成る程。まあ彼ならそう簡単に死なないだろうからね」
「まあね。ところでドクター、四体目の状態は?」
「問題ない」
ふうん、と適当な相づちを打ってノルドは眼鏡を掛けた。
 ルーツとロードは既にガジェット達の最前列で待機している。

「それで?四体目のコンセプトは?」
「…見敵必殺さ」
「成る程ね。了解」
そう言うと、ノルドは戦闘データを打ち込みながら独り言を呟いた。


「ロアと同じか」


 そして、深紅の男は苛立ちを壁に打ちつける。
殴り付けた鋼鉄の板が穿たれていた。

「くそったれが!今さら戻りやがって…!」
漆黒の衣類を着たかつての相棒、それが敵に戻った事にロアは苛立っている。
だが、そうなった以上管理局を相手に情けを掛ける必要が無くなった。

「まあ…雑魚相手に飽きてきたからな、丁度いいか」
そう言ってバリアジャケットを脱ぎ、デバイスを手にはめる。

その手を見つめる顔は先程と違い、思い悩んでいた。

「……どうあっても、止められないんだな。オレは俺を……くそっ」
拳を握り、再び壁に手を打ちつける。
目を瞑れば浮かぶのは一人の女性。


「……フェイト。お前なら、オレを止めてくれるか?……いや、見られたくないな。あんなオレは…」

助けてくれ。そんなメッセージは届かない。

止められないのだから。

変わってしまうのだから。

もう一人が出た瞬間、救いは凶器に変わる。
ロアはかぶりを振って嫌な考えを振り払った。


「…今日は、もう寝よう」

また明日。優しい彼女に会えると信じて。
腕の銀色に輝くリングが、廊下の光で鈍く光った。

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