魔法少女リリカルなのはLOST Battle
九ページ
なのはのすぐ傍にシグナムとザフィーラが降り立つ。
その姿を見たロアが突然笑いだした。何がおかしいのか、腹を押さえながら笑っている。
「くっ、あはははは!……そうだ、やっぱりお前じゃねえと楽しくねえんだよ!」
「…そうか」
「それで?管理局側の人間庇ってなんのつもりだよファルド。今更帰る気してんのか?止めとけよ、冗談にもならねえんだから」
「正直そう思ってる。…だがな、それでも」
MCSが魔力を吸い込み、剣の形が徐々に荒くなる。
「…俺は、こっち側の人間だ」
「人間?笑わせんなよ、管理局の犬が!お前も同じだろう?俺と、戦闘機人共とな!」
なのはは、歯軋りの音を聞いた。
背中から見ても分かる。拳が震えるくらい強く手を握りしめ、肩が震えていた。
「…お前も犬だっただろ」
「ああそうだな…。ま、昔なんかどうだっていいさ。違うか?時空管理局本局、機動武装隊の三番隊隊長…」
ド、ゴオン!!
地面を抉り込む様な一瞬の踏み込み。爆発したように加速した一撃をロアは両手で受けとめる。
「〜♪怖ぇ奴だなお前は…!」
「…御託はいい。言いたい事があるなら」
「拳で話せ、だろ?んなこと千万承知よぉ!!」
「分かってんなら初めからそうしろってんだ!」
弾き、距離を取る二人。ファルドにルーツとロードが飛び掛かろうとするがロアに止められた。
「止めろよ。邪魔すんな」
「ロア、本気でファルドと戦うつもり?どうなっても知らないぞ?」
「へっ、俺も知らねぇよ。どうなるかなんて」
肩を回し、筋肉を解しながらロアはファルドに歩み寄る。
「…MCS」
《ignition》
勢いよく戻ったシリンダーに合わせて、剣の魔力が上がった。
肩に担いで歩きながら左肩を回す。
「…援、護は?」
なのはが弱々しく呟くが、剣を振りながら一言。
「いらん」
一蹴され、大丈夫なのかと心配しそうになるが、その背中が何よりの答えだった。
不滅のストライカーであり、不屈のエース。
「それよりしっかり休め。以上」
不器用な優しさ。それを吐き捨てて目の前の同僚に剣を向ける。
雄叫びが二つ、重なり合って白昼を照らす火花と魔力の爆発が巻き起こった。
空で、陸で。時には二人を飲み込んで。
「おぉぉぉぉぉっ!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
青空で二つの軌跡が衝突する。弾かれない様に拳と剣が押し合い、やがて耐え切れなくなって花火が上がった。
地上に戻って来た二人はあっという間に疲弊している。
「はは…こうじゃねえとな…楽しくねぇ。そう思わないか、ファルド」
「うるさい。…少し、黙れロア」
肩で息をするファルドの頬を、一筋の汗が伝う。それを拭いながら再びケルベロスを構える。
元から不調であった体は、決定的なまでに欠損していった。
再び二人は構える。だが、ノルドがそれを止めた。
「あーストップ。ロア、撤退準備」
「何ぃ!?てめえ何のつもりだ!」
「ちょっとまずい状況に傾いてきたからね。強めの反応が幾つか接近中」
「……けっ。だったら蹴散らせばいい話だろうがよ」
「こちらの都合もあるから四の五の言わない」
不満そうに舌打ちすると、ロアは構えを解く。
「ファルド、今回だけは退いてやるよ。だがな、次は必ず倒すからな」
「……ふん。言ってろ」
「それじゃ、元・仲間に情報提供。俺達は一週間か二週間、動かないからのんびりしてていいぞー」
「勝手にしろ」
デバイスをしまうファルドを見て、ノルドはロアに首根っこ捕まれる。
「待て!」
シグナムが追おうと動くが、ルーツが連射して煙幕を張った。
その土煙に紛れて炎が一発、ファルドに向かって放たれるがあっさり弾かれる。
煙が晴れる頃には既にロア達の姿は無かった。
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