魔法少女ﾘﾘｶﾙなのはLOST Battle
八ページ
武装を構え直す二体に気圧されてナンバーズの動きが止まった。
「へっ。どうせろくに戦えないんだ。だったら一気に叩く！」
「アタシも賛成ッスねー。破壊してからの方が調べやすいッスもん」
「……行きます」
「だが最後まで油断するなよ。何が来るか分からんからな」
四人が同時に固まった二体に襲い掛かる。
絶体絶命の状況でもルーツとロードは戦おうとした。
――お前等、動くんじゃねぇぞ！
《……》
《……》
しかし、突然の通信に動きを止める。
ナンバーズの一撃が迫るが、声の主は助けてくれるものだと信じた。
そして爆発する二体の周囲。
咄嗟に防いだチンクとウェンディは比較的無事だが、前に出ていたノーヴェとディードが直撃を受けて吹き飛ぶ。
「な、何スか…！？」
「…増援か！」
「ご名答！」
その声と同時に赤い影にチンクが蹴り飛ばされ、巨大な岩に背中を叩きつけた。
「チンク姉！」
「うむ…姉は大丈夫だ」
「あ、の野郎ぉぉ！」
ノーヴェが起き上がり、怒りに任せた一撃を深紅の襲撃者に蹴りとして伝えるが赤色のベルカ式魔方陣、シールドに止められる。
「血の気が多い奴がいるみたいだな。嫌いじゃないね、そういう奴はよぉ！」
弾くと同時に右腕のカートリッジが装填され、左手でノーヴェの首を掴む。
「だが、落ち着けよ。でないと燃えるぜ？」
右手に炎が纏う。左手に力を込め、右腕の炎を叩き込んで吹き飛ばす。
零距離で爆発する炎。その爆炎からノーヴェが弾き出されて地面を転がった。
「ノーヴェ！くっ…！」
ライディングボードの先端からエリアルショットを連発するが、片腕で全て防がれる。
「シールドプレス…」
ベルカ式魔方陣を展開したまま右の拳を握りしめてシールドそのものを打ち出した。
それを防いだウェンディが更にルーツの一撃で吹き飛ぶ。
「ウェンディちゃん！」
「よそ見はいかんね」
《Angel Down》
ナンバーズの急な不利に、なのはの注意が反れる。
そこに放たれた白銀の誘導弾。
対応が遅れて空から落ちた瞬間、ロードがなのはを掴んでナンバーズの方向へ投げ飛ばした。
「よぉ、ノルド。一応援護に来たけど必要無かったか？」
「いやいや、助かったよ。ちょうどルーツとロードも危なかったしね」
《……》
《……》
「また何か人形増やしやがって…ま、どうでもいいけどよ。俺は戦えれば充分だ」
腰に手を当て、口の端を上げるロアの表情は楽しんでいる。
「っ……。皆、大丈夫？」
「何とかな…しかし、ノーヴェが…」
「アタシは大丈夫だよ。チンク姉…」
「だけど右腕が…」
ガンナックルが破壊され、ぎこちなく起き上がるノーヴェの姿は決して大丈夫そうではない。
「ディード、無事か？」
「は、はい…」
頷くディードも、左肩を押さえている。
全員が消耗している中、なのはが全員を庇うように立ち上がる。
(私が…しっかりしないと)
左手でRHを構えながら降伏を呼びかけるも、その気は全く無いようだ。
「降伏？…そういうのはな、自分が相手よりも勝っている時に言うもんなんだよっ！」
深紅のバリアジャケットが風で揺れる。
足元には深紅のベルカ式魔方陣が展開され、右腕のカートリッジが二発装填された。
両足をしっかり踏み込み、拳を引く。
「だから、この状況では……お前等が降伏する立場だ！」
《Fire》
「えぇ！高町教導官よぉ！」
拳から打ち出される絶対破壊の火炎がなのはに迫る。
防げない。そう感じながらも、精一杯の努力をする。
「レイジング、ハート！」
《Yes.my master》
自分に残っている魔力を振り絞り、灼熱の一撃からナンバーズを守る為にシールドを発動させた。
爆発を起こし、どうにか相殺して防ぎ切れた。
だが…
「火炎無双……」
「…そんな！」
無情に構えられた左腕が地面を殴り、爆発が満身創痍のなのはに襲い掛かろうと牙を立てる。
防ぐ手立ては……
――高速で駆ける漆黒の魔弾
今のなのはに……
――歯を食い縛り、番犬の名を叫ぶ
無い。
――主に応える番犬が、音速の速さを与える。
「こんな、ところで……」
《Sonic Burst》
天から吠える、地獄の番犬を飼い馴らす不滅の剣。
「ロアァァァァァァァッ！！」
……漆黒の剣が、灼熱の一撃を切り裂いて噛み砕く。
「……え」
なのはの前に
「…もしかして、貴方は」
現れたのは
「……諦めるのは止めろ。戦えるなら立て」
黒衣を纏う番犬の主
「それが出来ないなら、そこで休んでろ」
ファルド・ヴェンカーだった。
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