魔法少女リリカルなのはLOST Battle
一ページ
その直後、はやてとフェイトが医務室に入り様子を見に来た。
少しシーツが乱れていたのでそれを直す。
「…もう二日になるのに、まだ目が覚めないみたいだね」
「そうやね。シャマルの話じゃかなり消耗してたらしいし…。なのはちゃんは?」
「昨日気がついて、今はナンバーズと一緒。元気そうにしてたよ?」
「ん、なら安心や。問題はこっちの方やね……」
全身怪我だらけで魔力もほとんど残っていない状態のファルドが運び込まれた時は全員が驚いた。
それと同時に、気絶したなのはが運び込まれスバルとシグナムも戻ってきたので一時的なパニック状態になった。
「なのはちゃん達と相討ち…とはちゃうんやな?」
「うん。シグナムが逃げた所見たって言ってた」
「となると、第三者か…」
「…何だか、思ってたより難航してるね」
「色々まとめて起きてるからなー…うちも頭が痛いわ」
二人はベッドの傍にある椅子に腰を下ろす。
未だ眠りに落ちている青年の顔を眺め、手を握りしめた。
まだ暖かい。
「…フェイトちゃん。この人の事、どう思っとる?」
「え?……突然聞かれても分かんないよ」
眉を寄せ、困惑した様な表情のフェイトを見てはやてが笑う。
「実は、聞いたうちも良く分からへん」
軽い冗談だと思い、フェイトも笑いだす。
穏やかな時が流れ、手を離した。
左手の水晶が輝いて、二人の目を引く。
埋め込まれた様なデバイス。
「これ、どない仕組みやろ?」
「分からないけど…普通じゃないよね」
はやてがそっと左手に手を伸ばし、水晶に触れようとした。
《触らないで下さい》
「…あ、ごめんな…?」
ケルベロスがすかさず注意し、手を引っ込める。
《主を助けてくれた事は礼を言わせて下さい。ありがとうございます》
「良く喋るなぁ…」
「うん…」
唖然とする二人を余所に、ケルベロスはファルドに代わって喋り続けた。
《あまり主は他人とは話したがりませんので、私で良ければ答えられる事は答えます》
『………』
顔を見合わせたはやてとフェイトは目を白黒させ、幾つか質問をする。
その一つ一つに、ちゃんとした返答を返すケルベロス。
「聞きたいのはこれぐらいかな…」
「うん……。後、君のご主人が目を覚ましたら言っておいてほしい事あるんやけどええかな?」
《構いません》
「じゃあ………」
そして、はやて達は医務室を後にする。
誰も居なくなってから、ケルベロスは自分の主に謝った。
《申し訳ありません。ですが、主にはあのような優しい方達が必要です……》
身勝手な行動を主は怒るだろう。だが、それでも構わない。
本当に必要なのは自分の様なデバイスではなく、優しく見守って上げられる女性だ。
それも迷惑がる事は目に見えているが、主は仲間を必要として生きている。
ただ恐れているだけだ。過去の過ちを繰り返し、失う様な事をしたくないから他人を拒絶して孤独を望んだ。
《…主。貴方自身、気付いているでしょう?自分の居場所がどこにあるか》
ケルベロスの独り言は静かに広がっていき、寝ているファルドの耳へ入った。
目を覚ます様子は未だない。だが、番犬は待ち続ける。自分の主人が、本当の力を振るう時を。
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