魔法少女リリカルなのはLOST Battle
三ページ
「…休暇取ったら皆で海に来ようかな。その内話そう」
静かに呟くと、しばらく波の音に耳を傾ける。
目を閉じたフェイトの脳裏に浮かぶ、海ではしゃぐ友達の笑顔。
(なのはやはやてと一緒の海…楽しみだなぁ)
そんな事を考えるだけで、自然と頬が緩んでしまう。
にゃ〜。
「えっ?」
波の音に紛れて猫の鳴き声がフェイトの耳に入る。
辺りを見渡すが、見当たらない。
気のせいだと思ったが、確かに聞こえる。
にゃ〜♪
暖かくてフサフサした毛が脚に当たり、視線を落とす。白ネコが脚に擦り寄っていた。
首をしきりに擦り、人懐っこい声をあげている。
「え?あ……可愛い。けど…」
にゃ〜
足元から見上げる様に、ネコが鳴く。
足をどかそうにも周りをぐるぐる回り、踏んでしまうかもしれないと思うと動かせなかった。
フェイトが一度屈むと、ネコは膝に前脚を乗せて餌をねだる様に鳴く。
な〜…
「ごめんね。あげられる様な餌は持ってないんだ」
にゃ〜…
それでもネコは離れなかった。
一匹のネコを前に、困ったフェイトはとりあえず頭を撫でる。
気持ち良さそうに喉を鳴らすネコを見て、可愛いと思うのだが早く帰らなければ間に合わない。
だけど、放っておけない。
「どうしよう……」
悩んでいると、突然ネコがフェイトから離れて行った。
走り寄った先には一人の青年が立っている。
茶色の短髪。腰に上着を巻き、半袖長ズボンの私服姿。
「こら、他人に迷惑掛けるなって言ってるだろ」
み〜…
「…全く、しょうがない奴だな」
呆れた呟きを漏らし、優しく笑うとネコを抱き上げた。
手には買い物袋を持っている。
気配に気付いたのか、視線を向けると青年はお辞儀をしてきたので、フェイトは頭を下げた。
「すいません。ご迷惑お掛けして…」
「いえ。大丈夫です」
二人はベンチに座り、餌を食べているネコを眺める。
「貴方の猫ですか?」
「いいや、野良です。たまたま懐かれて…よく餌やりに来てるんですよ」
「そうなんですか…。家の事情で飼えないとか?」
「まぁ、そんなとこかな」
にゃー♪
餌を食べ終わったネコは感謝する様に一鳴きすると、走り去ってしまった。
青年は餌の容器を空の買い物袋へ入れ、回収する。
「ま、こんな感じ……」
「ふふ、餌で懐かれてるんですね」
「そうかも…」
笑い合う二人の姿は、恋人同士に見えた。
時間を見たフェイトが、慌てる。
「いけない。時間食い過ぎちゃった…。すいません、これで…」
「いえ、こちらこそ。アイツの所為で時間を…」
「あ…そんな事は」
「でも、すいません。早く戻った方がいいんじゃないですか?」
「そうですね。それじゃ…」
そう言い、走り去ろうとしたフェイトは一度立ち止まり、振り向いた。
「あの、お名前聞かせて貰っていいですか?」
「ロア…ロア・ヴェスティージ」
「……ロア。私はフェイト。フェイト・T・ハラオウン」
「それじゃ、フェイト。また今度、縁が会ったら」
「うん、またね。ロア」
車に乗ったフェイトは、急いでエンジンを掛けてWARS宿舎への帰路を走る。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!