[携帯モード] [URL送信]

魔法少女リリカルなのはLOST Battle
十ページ
―海上隔離施設・管理人室

 日差しのよく差し込む見渡しのいい部屋に、八神はやてと隔離施設の長が見合う様に椅子に座っていた。
リインははやての肩に座っている。

 管理人であるベテランの年配局員は、はやてからの話を聞いて悩んでいた。


「…なるほど。八神君、君の話はよく分かった」
年期の籠もった、低い声が静かに響く。

「だが、いいのかね?まだ彼女達は社会更正プログラムが完全に済んでいる訳ではないのだぞ?」


戦闘機人。名前の通り、戦う為に生まれてきた人間。

スカリエッティ自慢のナンバーズ達の内、No.T、V、W、Zを除いたNo.X〜]Uは管理局に保護された。

 戦う事しか知らない彼女達は保護された後、社会に馴染める様に“授業”を受けている。


「それでしたら問題ありません。後の社会的教育はこっちで引き受けます」
 なまりはあるものの、はやての口調はしっかりしている。

「こちらの部隊には極めて優秀な教導官がおりますので」
「極めて優秀…?」
「管理局が誇る『エース・オブ・エース』の、高町なのは一等空尉です」
 納得したように何度も頷くと、安心したように息を吐く。

「なるほど。…ならば、安心して任せられる。君の指揮能力も含めてな」
「ありがとうございます」
 緩やかに微笑むと、椅子から立ち上がり外の景色を眺める。

「君は、闇の書事件の罪をどうしているかね?」
「言い訳するつもりはありません。罪から逃げず、背負っていくつもりです」
「…重いぞ」
「分かってます」
 ただただ、前を見る純粋な瞳のはやてを見て、管理人は笑った。

「…あまり、快く思っていない者もいるようだが私は責めるつもりはない。長きに渡って悩ましてきた闇の書事件は解決した。それだけだ」
 昔を思い出しているのか、懐かしむ様に空を見上げる。

「私は局に務めて五十年になる。若い者の早い出世を見るのが楽しみになっているよ」
「そうですか…」

「…いかんいかん。危うくつまらぬ長話をするところだったな。私は君を応援するよ、頑張りたまえ。八神二佐」
「はい、ありがとうございます」
 はやてが管理人に向けて敬礼をした瞬間、建物を揺らす衝撃が施設を襲う。

二人がバランスを崩し、机に捕まった。

「な、何や!」
「くっ…!」
立ち直った管理人が机のパネルキーボードを叩く。しかし、何の反応も示さない。

「通信室。通信室!ちっ、何が起こった…」

「はやてちゃん!あれ!」
「何やリイン?…煙!」
「向こうは通信室の方向…!まさか、通信室がやられたか!」
 リインの指差した方角から、黒煙が立ち上っていた。

そして、視線を遮る様にガラスが割れて鋼鉄の隕石が降り注ぐ。


「敵の襲撃か!警備隊!」
「うちも行きます!行くで、リイン!」「はいです!」

「…すまんな八神二佐。私は保護した者達を避難させる。気を付けろよ」
力強く頷いたはやては勢い良く管理人室を出ていく。




戦争の狼煙は、上がった

[*前へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!