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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
五ページ
「…ちっ、ドクターの野郎……!」
もはや着る事は無いと思っていた制服の匂いは、昔を思い出させる。

――ファルド。今日も元気そうだな……

「……っ。だから…今の俺は…」


――隊長。これからお昼ですか?……


「止めろ……思い出すなよ、俺」
《大丈夫ですか?》

 過去の記憶。懐かしく、温かった居場所。

だが、帰れない場所だ。

「…ケルベロス。心配すんな」
《主には私が居ます》
「そうか……ありがとよ」
 左手の相棒の慰めに、礼を言ってかぶりを振る。

頬を流れる違和感に、片手でハンドルを操りながら触れてみると濡れていた。

「…泣いてたのか俺は」
 涙の跡を袖で乱暴に拭いさり、車を走らせる。目的地はまだ遠い。

だが、進まなければならない。過去を捨て切るために。



「…相変わらず高いな此処は」
 地上本部の玄関前から見上げるが頂点が見えない。
ずれた眼鏡を掛け直し、中へ入る。


 ロビーは問題なく通過できた。エレベーターを使おうと思ったが、使用中らしく待たずに階段を使う。

しかし、三十階も登った辺りから目的を思い出した。

「…ヘリポートだっつの。何むきになって登ってんだ俺は」
 左手はポケットに入れたまま、次は廊下に出る。

白を基調とした綺麗な建物の内部。似た服装の様々な人物がそれぞれの目的に向けて動いている。
 ファルドはその中に紛れて歩く。全員が全員、管理局の人間の顔を覚えていない為、何の問題も起きる事なく我が物顔で歩けた。


(さっさと用事を済ますか)
眼鏡をいじりながら廊下を進んでいくと、金髪の女性が部屋から出てくるのを見かける。
その姿に、緊張が高まった。

 流れる様に揺れる髪、すらりと伸びた綺麗なスタイルのフェイト執務官だ。


(ちっ。厄介なのに会ったな…)

「……?」
 自分へ向けられている視線に気付いたのか、ファルドへ顔を向ける。

潜入中のファルドからすれば一刻も早く立ち去りたいが、下手な動きは失敗に繋がってしまう。

「こんにちは」
「…こんにちはって時間帯か?」

 時計の針は七時を指している。それを見てフェイトは照れ臭そうに笑った。

「あの……どこかで会った事ありませんか?」

「……人違いだ。仕事、頑張れよ」
会話を適度に切ってその場を後にする。

背中から未だに視線を感じるが、ヘリポートに向かった。

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