魔法少女リリカルなのはLOST Battle
七ページ
剥がした左手首を押さえながら荒くなった呼吸を整え、ケルベロスを見つめる。
特に異常は見当たらない。ただ、未だ残る痛みが不快なだけだ。
「…今のは、なんだ」
「驚かせてすまないね。本来はデバイスを置くだけでいいんだがキミの場合は“神経そのものと結合”しているから致し方ないのだよ」
全く気遣う様な印象のない言葉を無視してファルドはドクターを睨む。
ノルドはそんな二人を尻目に、忙しく手を動かしている。
その時、奥深く暗闇の続いている廊下から足音が聞こえてきた。
現れたのは深紅のバリアジャケットに身を包む焦げ茶色の跳ねた短髪の青年。
両手には鈍い銀と金の輝きを放つデバイスを武装している。異様なのが甲から伸びるカートリッジの長さだ。
手首から肘を超え、肩まで伸びている。
ファルドと同様、黒のズボンだが、同じなのはそこだけだ。
腰回りをベルトの金属が覆い、両脇には予備のカートリッジが付いている。
そして、足回りを隠す深紅のマントに三角形の前垂れ。
上半身は防御を捨てた薄手の黒いアンダージャケット。一応肩まで保護しているが、その上に着るべきバリアジャケットは腰に巻いてある。
それは、彼の戦闘における自信の表れでもあった。
顔つきは精悍で引き締まった体つき。鋭く光る金色の瞳は威圧感がある。
「君か、“業火の拳王”」
「せめて名前で呼べ。ドクター」
「そのケンカ腰はロアかー?」
場の雰囲気を崩すような軽い口調のノルドにファルドは睨みつけた。
「失礼……」
「ロア・ヴェスティージ、今戻った。何やら珍しい顔がいるが?」
「私が呼んだのだよ」
「……」
ノルドからロアへ威嚇する様な目を映す。深紅のバリアジャケットに身を包んでいるロアは腰に手を着いて不満そうな視線を返している。
「久々に会ったってのに随分な態度だな、ファルド」
「そういうお前もな……」
「…さて、レイスが居ないがこれからの事を話しておこうか」
一触即発な二人の会話を中断させるようにドクターが話を切り出した。
ファルドはロアと同時に舌打ちすると、似たような姿勢で腕を組む。
「私の夢はスカリエッティを越える事……そして、時空管理局地上本部の破壊だ」
口先だけならば誰にでも実現可能だ。だが実際に出来た偉人は誰一人居ない。
「はっ、そんな馬鹿げた事が出来る訳ないだろう?大体、これだけの人数でどうやって……」
「キミにはこの数々の“フレーム達”が見えないのかね?ロア。私は“デバイス”の革新を起こす……その狼煙として…まずは、『海上隔離施設』を襲撃する」
「隔離施設…?あそこには何もないはずだ」
「いいや。スカリエッティ自慢の“戦闘機人”達が保護されているのだよ。その戦闘機人を私の“フレームデバイス”が破壊する事に意味がある」
その言葉に、“人形”は唸りを上げて肯定の意を示した。
一際高い声を挙げたのがファルドのデータを“吸収”した漆黒の一体。
研究所全体を震わせる大地の轟を挙げた鉄巨人。
つまらなさそうに声を挙げる紫紺色の一体。だが、確実に肯定している。
「私の計画に付いてくるかは、君達次第……好きにしたまえ」
「女神の恋人は参加するよ。これほど面白そうな話に乗らない手はないからね」
「…なら俺は見せてもらおうじゃねえか。アンタの言う“革新”をな」
ノルド。ロアの二名は即座に答えを出した。
だが、ファルドだけは興味無さそうにしている。
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