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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
九ページ
「これは…?」
「俺からの差し入れ。お前にやるよ」
「煙草、吸わないんですがね…ありがたく頂戴します」
「ほら、ライターもな」
「どうも…」
 ファルドは、最後にもう一度だけ青空を眺める。息を吸い込み、目を閉じて吐き出す。太陽の光が心地良い。

「…俺は行くさ」
「何処に行くってんですか?」
「決まってるだろ?」
柵から離れ、笑ったまま歩き出す。背中を向けて指を差した。

「俺は何時だって、この空に居る。だから俺の居場所はこの空の下の戦場だけだ」

「……」

「じゃあな、クルヴィス。次に会う時は敵同士かもな」

「冗談キツいです…」

「悪い悪い。…後、最後にお前に言う事がある」

「…何でしょうか?」

「いつか、地上と本局が一つになる時が来る。だからお前は…お前には、それを繋ぐ懸け橋になって欲しい」

「俺に…出来ますかね」

「あぁ。お前なら出来ると信じてる」

「……ならば、不肖ながらもこの柳クルヴィス。未熟者ながらも仕える君主の命令、某の命を全身全霊で期待に応えるべく尽くしましょう。…我が槍に掛けて」

「……じゃあな」

「はい。…達者で」

クルヴィスは、耐えた。その別れに。その背中を見送り、見えなくなるまで。


ふと、車の中からカルテを取り出す。

最後の診断書。

それにはこう書かれていた。


生体反応無し。魔力反応異常無し。しかし心肺機能は正常と判断。仮説だが、魔力を擬似生命力としている模様。前例の無い症状に戸惑いを隠せない。体の内部損傷も回復の傾向にあり、恐らく魔力が尽きぬ限り健康体だろう。

「……全く…本当に貴方は化け物ですよ。ファルド兄さん…」

煙草を一本だけ取り出してくわえる。ポケットからライターを出して火を着け、煙を含んで吐く。

「……いなくなる人間の診断書なんか、いらねーか」
ライターの火をカルテに近付け、そっと焼いた。徐々に炎が登り、半分位まで燃えた所でクルヴィスは海に投げ捨てる。


通信が入って来た。血相を変えて、副隊長がモニターに張りつく勢いの迫力で怒鳴る。

『クルヴィス隊長!何してるんですか!とっくに会議始まってますよ!』
「何って…煙草吸ってる」
『そんな事言ってないでさっさと地上本部に来て下さいよ!』

「うっさい」
通信を切り、再び煙草の煙を吸い込み、吐き出す。


「…あぁ、くそ……」

沈んだ顔を上げる。

空を見上げれば、今日も青い。

胸が晴れる様な青さ。

見ていて救われる白い雲をグラデーションに、太陽が輝いている。

守って貰った平和な時間。

守り抜いた、青空。

この空に、彼はいつでも居る。

この空の戦場に。










「煙草、苦いなぁ…………」

柳クルヴィスは、自分がまだ子供だと思いながらも



静かに、涙を流した。

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