魔法少女リリカルなのはLOST Battle
七ページ
信号が青に変わる。アクセルペダルを踏み、加速していく中でカルテを放り投げ、ダッシュボードから新しい一枚のカルテを取り出す。コレが三枚目、そこに書かれた名前は…
ファルド・ヴェンカー。
「…………」
複雑な気持ちで眺め、同じく放り投げる。
聖王教会で嘘は言っていない。
クルヴィス『は』ケルベロスの破片を見つけたのだから。
それしか自分は見つけていない。
きっと誰に言っても信じてもらえないだろう。だがそれで良い。
誰にも知られず、このままずっと静かな時間を過ごして欲しかった。おとなしく治療されていてもらいたい。
ふと、時計を確認すると会議の時間に遅れそうな事に気付いた。
「ああ、やべ。急ぐか…」
そう言ってアクセルペダルを更に踏み込み加速した。市街地を抜けて住宅街を抜けた先の海岸通りを一気に走り抜けようとする。
たった一人、青い髪の管理局の制服を着た男性が柵に寄りかかっているのを見て一瞬思考が飛んだ。今、誰が居た?
「っ、くそったれめ!」
歯軋りしながら両手でハンドルを急回転させてブレーキを踏み、派手な音とタイヤの跡を道路に擦り付けながら車を止める。傷が痛むが無視してドアを開けた。
肺を満たす潮の香りに一瞬むせそうになる。走る脚に合わせて吐き気が催す。それを堪えてクルヴィスは通り過ぎた男性の下へ走る。
「…はぁ、はぁ、はっ…!」
息を切らして、ようやくたどり着いた場所は潮の香りに混ざって僅かに紫煙を漂わせていた。
膝に手を当て、荒れた呼吸を整えて息を吸い込み顔を上げる。
跳ねた髪は青く、左腕だけは空洞になって風と共に流れていた。
右手に持った煙草を落とし、足で火を消して空を見上げている。何もない水平線の先で、何かを思い出す様に。
「何してんですか……」
不滅の名前は嘘じゃない
「ん?……あぁ、クルヴィスか」
彼はその名前を誇りにしている
「全く…本当にアンタは…」
なぜか?
「…自分勝手過ぎますよ」
エースと共に、もう一つ
「はは、それは悪いな…」
仲間を信じて共に戦い
「そう思うなら反省して下さい」
どんな逆境すら越える
「嫌だね。命令するなら…」
故にストライカーの名を持つ
「後二階級は昇格しろよ」
彼の二つ名は
「難しいですね…」
不滅のエースオブストライカー
そしてもう一つ
「こんなに天気が良いんだ。少し位多めに見てくれよ」
青空の騎士
「天気は関係ありません」
守る為に剣を持つ者
「全く…こんなに空が青いってのに後輩が厳しいなぁ…」
蒼天の守護騎士
「動けるなら帰って下さい」
聖典を継ぐ者
「ファルド・ヴェンカー一等空佐殿?」
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