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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
六ページ


 クルヴィスは一人、車の中でため息を吐いた。力を抜き、流れていく景色をぼんやりとした気持ちで見送りながら運転している。
聖王教会で言った事も、見つけた物も本当の事だ。何一つ嘘は言っていない。
なのに、どうしてこんなに辛いのだろうか…いや、答えは出ている。ただ認めたくないだけだ。


あの二人に言った言葉は、自分にも返って来る。

楽園も悪夢も連れて、ファルドは――

「…馬鹿野郎。余計な事考えるなよ柳クルヴィス…」

自分を誤魔化そうとしていた。嘘を言った。大丈夫と。心配いらないと、そう言った。

自分に、嘘を吐くのがこんなに辛いとは知らなかったから。

思わず泣きそうになった。

辛くて痛くて切なくて、本気で泣きそうになった。だけど我慢した。こんな事で涙を流しては怒られてしまう。

蒼い髪、強い背中、優しい笑顔、頼れる言葉、眩しい位に羨ましい生き方をしたエースに。

みっともないから止めよう。自分は仕事をするだけだ。

 信号が赤くなる。ブレーキを掛けて速度を落とし、後部座席の紙袋を掴む。その幻術を解いて、姿を現したのは一枚のカルテ。

こっそり持ち出した物だ。自分の名前が書かれた紙と、ファルドが運び込まれた時の物。

「全治三週間か…二週間経った今でも治る見込み全くねーよ、くそ…」
 極度の疲労及び魔力の消耗。そして怪我の完治までの時間が書かれていたが、医者は嘘吐きだなとつくづく思うクルヴィスだった。最も、当の本人が言えた義理ではないが。
その上ろくに治療も受けていないのだから当たり前の話だ。

そして、もう一枚。

目を通すだけで気が滅入る様な数々の文字に、投げ出したくなる。

ファルド・ヴェンカー

極度の魔力消耗、肉体疲労。脳の損傷による記憶喪失の恐れ有り。過労による感覚麻痺。神経細胞の麻痺。内臓の損傷による吐血。消化器官の衰退。

まだまだある。最後に締めくくった言葉は「即入院。最悪死亡の恐れ有り」

当然過ぎて笑ってしまった。

「当たり前過ぎるっての…」

だが、それでも彼は戦った。最期の最後まで。

例え空を飛ぶ事が出来なくなってでも終わらせたかった任務があった。ファルドはそれに命を賭け、そして達成したのだから問題はない。

彼自身には。

残された者達は不安と恐怖に怯える毎日だ。

帰って来るのかという不安。

もしかしたらという、恐怖。

そんなプレッシャーが辛い。

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あきゅろす。
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