魔法少女リリカルなのはLOST Battle
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誰かがいる。それは誰だろうか?答えはきっと振り返れば分かる。だけど、それが出来ない。
目が熱い。視界が潤んでよく見えない。胸から込み上げてくる気持ちが止まらない。
「っ……ぅ……!」
小さな嗚咽を洩らし、背後の足音を聞く。一歩一歩、ゆっくりと。だけどしっかりとした力強い歩み、覇者が覇王に成るために進む道を歩くような迷いのない足音。
涙が頬を伝い、地面に落ちていく。小さな水滴は乾いたコンクリートに吸い込まれて僅かな染みを残していった。
風が止む。
「鬼が地獄に落ちるかよ…」
紅蓮の破壊者
「俺は、ちゃんと帰って来たぜ」
管理局の、赤い鬼
「約束通り…お前の下に」
百戦錬磨の拳を振るい
「守ると決めたからな」
灼熱の闘志を燃やし
「だから…フェイト」
憎悪に汚れた戦友を救い
「もう安心しろ」
最後まで青空の騎士と戦った
「俺は、帰って来たぜ」
真紅の覇王
「お前を、守る為に」
ロア・ヴェスティージは帰って来た。
ただ一人、愛する女性の下に。
「ロア…!」
我慢出来ず、名前を呼んでしまった。涙が止まらない。振り返り、すぐそばまで来ていた胸の中に飛び込む。
傷だらけで、ボロボロの壊れそうな体。両腕に、肘から先へ包帯をぐるぐる巻きにして。左目を閉じた姿は痛々しい。
だけど、凄く強く感じるその体を抱き締める。もう離したくない。もう、離れて欲しくないから。
「…約束、守れよ…」
「えっ…?」
にっと笑い、指で涙を拭う。
…あぁ、忘れてた。そうだった。
戦場から帰って来た彼を迎え入れてあげなければ…
一言だけでいい。
「ロア」
「ん?」
必ず会える。だから言うんだ。
私は、約束の言葉を。
また会った。帰って来た彼に言わなきゃいけない言葉。
とても簡単で、とても大切な挨拶
別れとは逆の言葉。
再会する言葉。
だから笑顔で言わないと
彼が守ってくれた笑顔で
私は、一言だけ告げた。
「お帰りなさい……」
だから、こう返してくれた。
「あぁ……ただいま、フェイト」
優しく、抱き返してくれた。それが凄く嬉しくて、また泣いた。ずっと、ずっと泣いてしまったけども彼は待っていてくれた。
ずっと帰りを待っていた私が泣き止むまで、ずっと………。
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