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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
四ページ

 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは海沿いの歩道に備えられているベンチに座っていた。彼女の膝の上では白い猫が丸くなって寝ている。優しく撫でてやると、ゴロゴロと喉を鳴らした。

 出会った鬼は未だ帰って来ない。拳に炎を灯し、その胸に灼熱の闘志を秘めた男ロア・ヴェスティージ。彼が世話していた白い猫はまだ彼の帰りを待っているのか、この場所から離そうとすると暴れだす。
だから、フェイトはいつも時間を見つけてはここに来ていた。

いつかと同じように、ロアが餌をあげに此処に来るんじゃないかと思い、待ち続けている。

「……ロアは、帰ってくるよね」

なー♪

 一声だけ鳴いて、再び丸まる。何だか励まされた気がしてフェイトはまた撫でた。
約束は裏切らない。あの時の別れの言葉はきっと不器用な彼の約束なんだ。

さようならの言葉。そして、彼はまだ帰って来ない。

風が吹いた。ミッドチルダに夏が近づいている事を知らせる暖かい気温を運び、通り抜けていく。

青空と共に、平和な時間が流れていた。もう少しだけ此処に居よう。時間はまだある。

だから、もう少しだけ居よう。

「夏になったら…皆と泳ぎに来たいな」
青空の下で、紅蓮の太陽の照らす浜辺に皆と笑いながら一緒の時間を過ごす。どれだけ贅沢な事だろう。

そこに、ファルドとロアが居れば一体どれだけ幸せだろうか?

だけど、まだ彼等は帰って来ていない。

 ふと、膝が軽くなった。猫が飛び降りてどこかに行ってしまうのが合図。

「もう時間か…行かなくちゃ」

いつの間にかそれが決まりになっていた。タイムリミットは猫が去るまでと、決まって丁度良い時間にいなくなる。
走り去って行く猫を一度見た後、フェイトは立ち上がり背中を向けて歩きだす。停めた車に乗って、仕事の続きをやらないと。

そう、思っていた。


にゃー♪


やけに猫の鳴き声が近い。

きっと人懐っこい性格だ、たまたま近くを歩いている人に鳴いているんだろう。

だから、気にする事はない。

「ああ、やっぱりよ…」

その声を聞くまでは。

「初めて会った場所で再会すんのが、お決まりだよな」

「――」

聞き覚えのある声。聞き覚えのある口調。聞き覚えのある、態度。

待ち望んでいた声。

強く、強く、とても頼りのある気合いのこもった声。

風が吹いた。

優しく、海を駆け抜けて…フェイトの髪を揺らす。撫でる様に、愛でる様に爽やかな風。

今、自分以外に誰が居るのか?

今、自分以外に誰が話している?

今、自分以外に誰が語り掛けた?

誰の声が、聞こえただろうか?

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