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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
三ページ


 次にファルドが眼を開いた時には瓦礫の窓から太陽の光が廃墟の空間を照らしていた。
まだ寝呆けている頭を一度柱に打ちつけ、体をほぐす準備体操をじっくりと時間を掛けて行う。

頭の片隅に誰かの伝言が引っ掛かっている。まだ睡眠を欲する体に喝を入れてから数分後に思い出す。

「……ふぉふはーふぁら来ふへうに言ふぁれ(ゴクン)てたんだっけ…(訳:ドクターから来るように言われてたんだっけ)」

口に携帯食料を頬張りながら独り言を呟き、ようやく思い出した。
食事を手早く済まし、下の階の水道で顔を洗う。

ひび割れ、歪んだガラスに映る自分の顔が奇妙な形に曲がりくねっているのを見て、何故か吹き出してしまった。

「酷い顔してるな…俺」
《ガラスが原因です》
「それぐらい分かる」
独り言に正論を語るケルベロスを叱りつけて上の階に戻り、瓦礫の崖から太陽を見上げる。
手で目に影を作って見るが、遥か彼方の輝く星は直視出来なかった。

ため息を吐き腰に手をついて視線を下に向けるが、眼下に映るのは廃墟ばかりで気が滅入る。

「……少しは気持ちが豊かになる風景が見たくなるな」
《青空はどうですか》
「見飽きたんだよ。空は……」
何となく追い討ちをされた気がしたファルドが更に落ち込むような声を上げた。

そして、左手を宙に伸ばし拳を握る。

「ケルベロス、セットアップ。ドクターの所に行くぞ」
《了解しました、主》

左手の宝石から黒い光が放たれ衣類を包んでいき、バリアジャケットが上に重ねられていく。

上半身の服は右腕が半袖、左腕が長袖の黒い外套に変わり、両腰を防護する金属とデバイスをしまうホルダーが一緒になったベルトから足を覆う正面の開いたマントが伸びる。

左手を天に伸ばすと漆黒の衣類に負けない暗さの散弾銃が部品ごとに合体。

初めにトリガーとグリップが握られ、その前に銃身の下部と上部が元の形に戻ろうと現れてスライドしながらファルドの手に握られる。

銃で目の前の空間を薙払うと、それまで周りを防御していた魔力が拡散。戦闘準備の整った“番犬の主”が立っていた。

「……行くぞ」
《はい。何処までも付いていきます》
「良い返事だ。ケルベロス」
そして、眩しく輝いている太陽に向けて空に飛び立ち、いけ好かないドクターの元へファルドは飛び立つ。空を駆ける黒い弾丸は、管理局の監視の眼を掻い潜って見つかる事はなかった。









――???・研究所施設

嫌になるくらいに無機質な廊下。灯りも窓もない“そこ”は、やけに綺麗なのだが周囲の暗闇が清潔感を台無しにしている。
外の世界から拒絶され隔離され、差別された様にそこには何もない。

ただ真っ直ぐに伸び、終点があるのかすら怪しい暗黒の廊下をファルドは歩き続けている。
もう見慣れた光景。鼻腔を突く鉄の臭いにも不快感はない。

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あきゅろす。
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