魔法少女ﾘﾘｶﾙなのはLOST Battle
プロローグ
――主。我が主よ。
折れてなお立つ主よ。
不屈の心を胸に秘め
不滅の剣を握りしめ
悪夢と戦う我が主よ
貴方の剣は折れていない
まだ私がいます
我が主よ
私が残っています
我が主よ
貴方の望む最強の剣が
貴方に相応しい最高の剣が
我が主よ
青空を守護する騎士よ
青空を愛する騎士よ
まだ折れていない
我が主、ファルド・ヴェンカー
我が主、エースオブストライカー
我が名はケルベロス
朽ちてなお守護する番犬
忘れるなかれ
我が主よ
我は常に貴方と共に
我は常に貴方の傍に
我は常に貴方の背に
我は常に付き従い、
我は常に共にある。
我は…
――影なり。
空は墜ちない。空は飛ぶ。人々の思いに応え、願いを浮かべ舞い続ける。故に清浄、故に純粋。
守る騎士よ。我を守る使命の騎士よ。忘れるなかれ。
我は常に汝と共に。
汝は常に我と共に。
悪を許さず不浄を滅する。
魔を断つ剣を持て。
魔を砕く拳を誇れ。
魔に屈せぬ心を称え
魔を恐れぬ力を振るえ
この空は汝を祝福しよう。
青き騎士よ
赤き闘士よ
対を成す者達よ
魔を滅せよ
それが、我らの願い
それが、我らの望み
汝の力はその為に
汝の在るべき場所は
この空なのだ
パリン――
「あっ…」
「騎士カリム、大丈夫ですか？」
「え、えぇ……」
聖王教会。カリムの持つティーカップの持ち手が突然折れた。
一人でに。何の前触れもなく。
「……」
窓から覗く空を見上げる。
今日も晴れ。いい天気だ。
それなのに――
何故こんなにも空が怖いのだろうか。
――俺の負けだ
もう残っているものは無い
もう戦う事が出来ない。
あの日散った仲間達にどう謝ればいい？
どんな顔をすればいい。
ロア。ありがとう、最後まで着いてきてくれて
本当にすまない…
「……」
だが俺は…戦いたい。
この悪夢を
この楽園を
俺は、壊したい。お前のように、滅茶苦茶な破壊力を持つ拳が欲しい。
この戦いが終わるまででいい！
だから！
誰か、俺に剣を！
決して揺るがぬ信念を秘めた不滅の剣を！
俺に！
俺の…左腕にッ！
「ケルベロオオオオオォッス！」
俺の声に応えてくれ！
お前しかいない、お前だけが俺の剣だから！
俺はまだ終われない！
ヴォイドの剣が首を狙って振り下ろされる。あろうことかファルドは右手で掴んで軌道を反らし、顎を蹴り返す。
刃の食い込んだ右手が鮮血に染まった。だがもう気にしない。
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