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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
十ページ
何をやっても半人前。

狙った射撃は隣の的に当たる。

体力は人並み。魔力も人並み。

空を飛べなければ脚が速いわけでもない。

書類整理の速さは目を見張る。だけど戦場で生き残るのに関係ない事だ。

訓練校での成績は最下位。教官ですら匙を投げた疫病神。

落ちこぼれの見本とまでに言われた新人局員。

嘘だけは超一流の口先だけの男。

それでも、自分の将来を見てくれた。

大丈夫だと、言っていた。

手段があると、語ってくれた。

知っている限りの知識と得た経験の全てで相手してくれた。

上層部にケンカを売ってでも最後まで付き合ってくれていた。


『アンタは一人の局員がどれだけ集まって管理局にいるのかを考えた事があるか!その一人を育てるのが俺達教導隊じゃないのか!』

通りすがりに、聞いた。モニターの前の上層部に逆らう姿を見てしまった。
階級制度の管理局で上官に怒りを向ける事に全く恐れない背中。自分の行動に疑問を持たない立ち振舞いに憧れた。

そんな落ちこぼれに付き合って、同じように罵られても気にしなかった。

ただ、自分の成長を願い

ただ、ひたすら付き合って

将来性に期待してくれた。

無理を言って、無茶をやって。

最後まで……。


だからこそ、教えてやりたい。


貴方の育てた柳クルヴィスという一人の青年は、こうまで成長したと!


自分を馬鹿にするのは構わない。

だが、兄を馬鹿にする事だけは許さない。

何一つ間違った事をしていないのだから。


「………」
 勝つ為に、証明する為に、教える為に。負ける訳にはいかなかった。勝つ方法は見つけてある。しかし、失敗したら全て台無しになってしまう。
ここまでの戦いが。今までの作戦が。見抜かれたら終わる。

怖かった。失敗する事が。

尊敬したエースの間違いを認める様に、怖かった。

《貴様も大概にしたらどうだ?》
「なにが?」

《所詮魔導師。戦い方は抜群に変だがな》


――あの人は、間違える事を恐れただろうか?


《俺には勝てん》

「大和魂舐めんな、こちとらジャパニーズサムライの血統。退く訳にはいかないのよ」

《不憫な奴だ》
「そりゃありがとう」

《お前ではない。お前の様な部下を持った、エースオブストライカーがだ》

「…取り消せ」

《自らの勝算すら計算出来ない愚か者を持ち、実に報われない》

「黙れ!…それ以上、ファルド一佐を侮辱するな…」
 頭が沸騰しそうに暑い。腹が立つ。その呆れた様な、馬鹿にする様な仕草がクルヴィスをイラつかせる。


《お前の様な奴を育てて》



―間違いだったのではないか?



「それを証明する為に、俺がお前を破壊する!」


だからこそ、戦場で背中を見せたくはなかった。

自分が討つべき将が目の前にいるのだから。

クルヴィスは、恐れない。

間違っていないのだから。

あの人が育てた、自分のこの戦いに敗北する事を。

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