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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
九ページ


――Rider...LOST
――Baster...LOST



《ふん、結局失敗か。バスター》
《…ライダー?》

ブレイド、シャドウに伝えられる消えた反応。


「そりゃ残念でした」
クルヴィスが皮肉な笑みを浮かべ、余裕のある表情を見せるものの疲労感は隠せない。綺麗なツヤが自慢のブロンド色の髪は汚れ、錆びた金貨の様に光を失っている。腰回りを覆う外套の端はボロく、見る影もない。

肩を上下させ、汗を吸ったアンダージャケットが肌に張りつき冷えて不快感がまとわりつく。
構えだけは解く訳にはいかない。目の前の敵に油断なんて出来ない。気を抜く訳にはいかない。

何としても、ここで自分が破壊しなければ地上が墜ちる。

並の魔導師が何百人集まっても、きっとコイツは破壊出来ない。

不利を有利に。多勢が無勢に食い尽くされる。最後に残った一人だとしても、それはワンマンアーミー。

一人きりの軍隊。僅か一名の小隊員。大隊長。参謀。偵察員。突入部隊。

全てをこなし、戦火を広げ君臨する。

戦争の戦場の中に混沌とする程に明確に。

血に濡れた装甲が空間を漂う魔力を吸い込んでいく。

《どうした?終わりか?》

「いーや、休憩中」
両手には赤い剣。魔力を圧縮した半実体――それでは生温い。

実体を持つ剣が握られている。片手で取り扱える短い長さの刃は両刃、前後どちらでも斬る事に特化した形状。

鉄より固く、羽根より軽く、何よりも決して折れない。

(勝算が無い訳じゃない…)
無限に回復する再生力。底の無い戦闘能力。全身に隠された武装の数々。

どれを見ても考えるだけで戦意を喪失する。熊と戦う仕事を押しつけられる気分でクルヴィスはため息を吐いた。

どうせ愚痴なんて誰も聞いちゃくれない。

何故ならばそこにいるのは自分一人なのだから。

一人の軍隊に、一人の軍人が勝てるのか。

否。勝たなければならない。

魔王と戦う勇者に勝利を期待される様に、この戦いで勝たなければこの第二の故郷に未来は無い。

「何だかエースな気分だ…くそったれめ」

皮肉に毒づく。英雄になりたいんじゃない。他人から賞賛されたい訳でもない。

手柄が欲しい訳でもない。

柳クルヴィスが望むのは世界の平和でもなければミッドチルダの安全でもない。
彼が戦う理由は正義ではない。

他人に認めて貰いたい訳でもない。今の地位を確立する働きが欲しい訳でもない。

ただ、礼がしたかった。

ありがとうの言葉ではなく、目に見える形で見せたかった。

貴方は間違っていないと

貴方が育てた柳クルヴィスという管理局の隊員は、ここまで成長したと教えてやりたい。

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あきゅろす。
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