魔法少女リリカルなのはLOST Battle
プロローグ
フェイトがファルドと戦った日から一週間が経った。
その間、何度もWARSは衝突しては取り逃がす。を繰り返していた。
管理局の誇るエースが悪いのではない。
その実力を上回る戦いが出来る相手なのだから、彼女達を責める事は誰にも出来なかった。
更に、新しく『深紅の青年』が現れて地上の管理局は混乱している。
そんな中、ヴィータはファルドを発見し戦闘していた。
「シュワルベ・フリーゲン!ぶっ叩けぇーっ!」
古代ベルカ式の魔方陣が足下に現れ、ヴィータは四つの小さな鉄球を打ち出す。
「撃ち抜けっ!ストライク・バーストォ!」
六芒二重円の魔方陣を銃口に展開し、破壊力の高い射撃魔法を無理矢理連射して全弾を撃ち落とした直後、デバイスを振り上げて接近している赤い衣の少女に気付いたファルドがすぐさま後退する。
互いに充分な距離を空けたまま睨み合う。
夜空には数多の光源が地上を照らし続けている星と、漆黒の青年、真紅の少女が浮かんでいた。
「ちっ…アイゼン。カートリッジロード!」
《cartridge Load》
ハンマー型のデバイス、グラーフアイゼンが軽快な電子音声を上げて魔力を帯びた弾丸を装填する。
すると一時的にヴィータの魔力が跳ね上がった。
「……『ベルカ式カートリッジ』か」
そんな呟きに耳を傾ける事も無く、真紅の騎士は問答無用に鉄槌を下す。
夜空を駆ける二つの軌跡。幾度も、飽きる事なく、衝突を繰り返しては急速に旋回し再び衝突。
何度同じ事をしたか判らない。
「でやぁぁぁーっ!!」
「うぉぉぉっ!!」
一際強力に激突した二人は離れる事なく火花を散らし、新しく地上を照らす。
ケルベロスの下部でアイゼンの柄を押さえ続けるファルドの頬を汗が一筋流れて落ちる。
ヴィータは荒くなった呼吸を必死に押し殺しながら力で押す。
やがて不利を悟ったファルドが弾き飛ばし、追い討ちの射撃魔法を連射した。
すかさずベルカのシールドで弾くヴィータ、反撃に移ろうと解除した直後に飛び蹴りが小さな体を吹き飛ばす。
「うあっ!……はぁ……はぁ……」
「くっ……流石に、キツくなってきたな。今回は…これで退かせて貰うぞ…」
顎まで流れた汗と額を拭いながら背を向ける。その隙に指の間へ出現させた鉄球を一つ、背中目がけて力の限り打ち付けた。
「逃、がすかぁぁー!」
苦し紛れの一発にありったけの思いを込めて吠える。
だが、見向きもしない一発に粉砕された。
肩に担いだ黒い銃の顎が鉄球を迎える。
「…ぶち抜け」
《Strike burst》
黒い魔方陣の中央に集まる魔力。
迫る鉛色の弾丸へ一切の危機感を持つこと無く、放たれた。
巨大なレーザーが鉄球を飲み干し、打ち手を喰らおうと逆に迫る。
咄嗟にシールドで防いだヴィータだが、煙幕に包まれた。それを晴らした頃には既に青年の姿は無い。
「…くそ…逃がしちまったか」
苦虫を噛んだ様な呟きが暗闇に吸い込まれ消えていった。
悔しさを晴らさんと出せるだけの力でアイゼンを握る。
手袋で覆われた指先が掌を刺す。
後ろ髪を引かれる思いを残したまま、ヴィータは愛する主人と信頼して止まない仲間の元へ戻って行った。
「……ちくしょう」
最後に呟いて、夜空を駆けて行く。
こうした戦闘をなのはやシグナム、ヴィータは繰り返させられていた。
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