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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
九ページ
――廃墟、隠れ家


まだ日は高い。だが、後数時間もすれば傾いていき、すぐに世界が紅く染め上げられるだろう。

管理局から場所を感知される事もなく黒いバリアジャケットの青年は戻って来た。

「……ケルベロス、モードリリース」
《YES'sir》
全身が黒い光に包まれ、左手の甲に吸い込まれる様に消えていく。
光の消えた青年の服装はお洒落とは無縁そうな味気ない印象が強い。

白シャツが覗く胸元、その上からだらしなく黒のジャケットを着込み、下のズボンも使い古された感じだ。

お洒落、というよりは「面倒くさいから」が良く似合う服装。
内側の胸ポケットから煙草を出し、ズボンのポケットからライターを取り出してくわえた煙草に火を点けて軽く吸って息を吐く。
吐き出された紫煙が漂い、すぐにかき消された。







 時は進み、夕暮れ時。青年が壊れたソファーに座りながら液晶ディスプレイのキーボードを叩いていると、通信回線を開く様に表示される新しい液晶画面。

くわえた煙草の先から煙が昇り続けている。青年は無視してデータを整理していくが、その内画面が赤く点滅し、その中心に「ALERT」の文字。
指で煙草を挟み、口から離して舌打ちをすると回線を繋ぐ。

そこには女性の様に伸ばした銀髪に眼鏡を掛けた若い科学者、ノルド・クラウェスがテーブルに両手をついて画面を覗く様に待機していた。

『…っと、ようやく繋いでくれたか。どうだい調子の方は?』
「別に…普通」
『そうかー。てっきりドジ踏んだと思ってたけど無事みたいだな』
「うるせぇ」
ディスプレイ越しにノルドを睨み付けると、やれやれと言わんばかりに首を振り、ずれた眼鏡を持ち直して若干真面目な口調で話を続けてくる。

『なあ、ファルド。お前さんのデバイスだけど本当に調整しなくていい訳?その内不具合発生しても責任取んないぞ?』
「……」
ファルドと呼ばれた青年は無言でデータをまとめている。聞く耳持たず、というか仕事に集中しているようだ。
 ディスプレイ越しにノルドは更にまくし立てようとしていたが、それよりも早く威嚇する様な瞳で睨まれる。

「余計な世話だ。さっさと切れ」
『……へーいへい、解りましたよ。ま、いざというときは頼ってくれよー。それじゃ』
いつも通り軽い感じで言うと、向こうから通信を切ったのかディスプレイからノルドの姿が消えた。

ファルドは煙草をくわえて吸い、息を吐く。


「……テメェらの助けはいらねえよ。一人で充分だ……俺は……」
 暗く、沈む様な呟きを漏らして焦げたデスクの上を見ると、そこには一枚の写真立てがあった。



今より少し若いファルドが照れくさそうに仲間と肩を組んでカメラに向けて親指を立てている。


管理局の制服に、身を包みながら。

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