魔法少女リリカルなのはLOST Battle
十ページ
「ぐっ…!」
地面に倒れたファルドが小さく呻き、立ち上がろうとするが腕に力が入らず再び倒れる。予想以上に体が思うように動かない。全身に重石が付いた様な気分だ。
(くそっ…!)
内心毒づきながらも左腕に力を込めて起き上がる。まだ戦いは始まったばかりだ。こんな所でもたつく訳にいかない。
シャドウはカゲギリを構えたままその動きを不審に思っていた。
(…妙だな。先程の一撃はそれほど本気でやった訳ではないというのに…)
なのに、ファルドはまるで渾身の一撃を食らった様にふらついている。弱っている。それが不思議だった。
(それだけではない。魔力量も…)
「どうしたシャドウ、来ないなら…こちらから行くぞ!」
ファルド本来の魔力量はSS…もしかしたらSSSランク相当のはずなのだが、シャドウのセンサーにはAAランク相当となっている。
異常なまでに能力が低下していた。だが、それでもファルドは戦おうと剣を振り銃を撃つ。シャドウもまた、盾で防ぎ剣を振るった。
そんな状態で戦ってもファルドに勝ち目は無い。それなのに、何度弾きとばされても起き上がる。
勝算の見当たらないエースらしからぬ戦い。ストライカーとしてあるまじき無謀極まりない戦略。その行動はファルドの二つ名を汚していた。
《何故、それでも戦う…!》
「…無様、か。それとも今の俺は滑稽か?シャドウ」
《それでも私の母体となった男か!》
シャドウは激昂と共にケルベロスを弾き飛ばす。だが、ファルドの表情は冷静そのもの。
更なる追撃を入れようとISを発動させた。
「…だからこそ、だ。俺が何故こうまでするか分からない限り」
視界の外。ファルドが手を伸ばした先には宙に舞うケルベロス。ただそれに念じる。今の自分が望む姿を、そしてケルベロスはそれに答え形を変えた。
三つ頭の番犬の牙へと。
「お前に、勝ち目はない…!」
カゲギリが迫る。しかしそれよりも早くケルベロスが二人の間に割って入り、シャドウを弾く。
《くっ!》
体勢を直した途端飛んでくる三本を避ける。回避した先にはファルドがいた。その手には…
《!?》
あるまじきケルベロスが握られている。既に三本飛ばしたはずであり、その手には無いはずの。
「言った筈だ。俺は、全力で目の前の障害を排除する、と!」
ファルドが振り下ろしたケルベロスがカゲギリの盾を破壊する。リーチが長ければ腕もろとも斬り落とされていた。
「その為なら…命の一つや二つ賭けてやる…」
シャドウは始めて恐怖した。限界を見せないファルドの底知れない執念とその戦術に。
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