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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
八ページ



「……」
 ロアを置いて遺跡に向かうまでの道で、ファルドは一度も敵に遭遇しなかった。木々の間を抜け、徐々に見えてくる遺跡の入り口の前に出る。
周囲に気配は無い。自然の闘技場、とでも呼ぶべきか。綺麗に整えられた広場に再び出た。


「……………」
一通り警戒した後、遺跡の入り口を眺める。懐かしい感覚、悲劇が起こる前までは仲間と共に降りた場所。
 神殿の様に柱が等間隔で並べられ、三角の屋根の下には石畳の廊下が暗闇に向かって繋がっている。老朽化が進んでいるせいかヒビが入り色褪せていて脆くなっていた。


遺跡の入り口に脚を向けた直後、別な足音が重なり、ファルドは足を止める。カチャ。軽い金属の駆動音。廊下の奥、暗闇の中から人の形をした影が現れる。
 深紅に燃える赤いマフラー、鋭利かつ強靭な統括された四肢。凶悪なまでに研ぎ澄まされた黒の刃を持つ影。


「…シャドウ」
《…ようやく来たか、ファルド・ヴェンカー。我がオリジナル》
二人は武器を構え、静かに話し合いながら距離を詰めていく。


《どれほど待ちわびたか…この瞬間を…!》
「ここにはお前だけか?」
《ああ。一対一で決着は着ける物だ。それに…防衛ラインは全て突破されたからな》
「そう、か…。一つ約束しろ」
《?》

「俺が勝ったらロアに向けているドールを全て退避させろ」

《いいだろう。…言う事はそれだけか?》


ガチャリ……


「ああ…それだけだな…」

静かに流れる風。二人は互いに横を通り過ぎていき、止まった。


「…先に通るのは、お前を倒してからだ」

《成る程……》


時間が止まる。風が止み、木々が押し黙る。ファルドは一度だけ、ケルベロスに額を当てた。
シャドウは一度だけ、マフラーを掴んだ。

黙祷を捧げ、二人は背中合わせのまま獲物を天に掲げる。


「ここに誓う」
《ここに誓う》

二人の声が重なった。

「俺は俺の全てを賭けて」
《俺は俺の全てを賭けて》

空に澄んだ声が吸い込まれていく

「我が前に立ちふさがる」
《我が前に立ちふさがる》


「障害の全てを凪ぎ払うと」
《障害の全てを凪ぎ払うと》


「今、この時から!」
《今、この時から!》




世界が動く。時が流れ、二人の誓いの言葉が閉じられた時。



自分との戦いが始まった。





 初撃は鏡映しのように寸分違わぬ狙いで剣を弾き合う黒と黒。火花を散らし、閃光に身を照らし合う中で瞬きする間も無い。

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あきゅろす。
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