魔法少女リリカルなのはLOST Battle
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アジトを抜け出した二人は地上に降りた化け物を目指して真っ直ぐ飛んでいる。巨大な前脚には爪が生え、体を支える下半身からは黒い翼が二枚生えていた。頭部と思われる目の無い獣の部分は亀の様に首を伸ばしている。十年前とあまり姿形は変わっていなかった。それが、なのはを苛つかせる。
「なのは。冷静にな」
「ファルドさんもね」
「シャドウとブレイドは俺が止める。だからはやては頼んだぞ」
「うん、必ず」
背後からファルドは真っ直ぐ突き進んだ。どうせ気付かれているなら最短距離で接近した方がいい。シャドウとブレイドの二体は武装を構えて迎撃に飛んできた。
なのはは振り返らずにナイトジョーカーへ飛ぶ。
十年前は四枚の性質が異なるバリアを破って破壊したが、今回はなのはとファルドの二人しかいない為困難。だが、そこまで再現はされていないはずだ。
「エクシード・ドライブ!」
レイジングハートをエクセリオンモードにして本来の姿に戻る。カートリッジを装填して真上からエクセリオンバスターを放った。
《ヴァリアブルシールド!》
「っ…そんな!」
性質は同じだが、四枚のシールドは再現されている。強固な防御に防がれ、自由自在に向きを変える触手がなのはを狙った。
砲撃を避け、鞭の様にしなる一撃を辛うじて避けて一度退避する。
ファルドはケルベロスを二本に別けて二体の猛攻をしのいでいた。手数も実力も上回っている相手だ、単なる時間稼ぎにしかならないがそれでもやらない訳にはいかない。
「………」
妙な気分でシャドウを見つめる。作られた自分の完成系。なら不完全である自分の存在理由は何なのか。……不要だから、ハインセルドは消そうとしていた。
《ふっ!》
(こいつには……適わないよな)
至近距離からの連射に耐え切れずシールドが破壊される。そしてブレイドが更に一撃を加えてファルドを落とす。
(だがそれでも……やらなきゃならないんだ…)
笑っているなのは達がいる。
夢を見ている後輩がいる。
信じてくれた兄弟がいる。
それを守ろうと思った。
不完全な命だけど、その気持ちだけはどうしようもないくらいに強くなっていた。
誰かの笑顔が守りたくて
誰かの願いを叶えたくて
必死に戦って、傷ついて、折れそうになっても立ち上がって、
また戦っての繰り返し。
そんな生き方で誰かが救われるなら構わない。どちらにしろけじめはつける。
「…ケルベロス、サードフォルム。リミットブレイク!」
《YES.SIR!My.MASTER!!》
ケルベロスを放り投げ、魔力を込めると三つの部品に別れた。黒い刃を纏い空を走る。
《何っ!?》
「お前等だけは…!差し違えてでも叩き壊す!」
三頭の剣がブレイドとシャドウを襲った。
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