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魔法少女リリカルなのはLOST Battle
四ページ
 しばらくの間、両者を包む沈黙。風が吹き、木々が揺れて葉が舞い散る。

両手でバルディッシュを構えるフェイトの表情は険しい。油断する事なく敵を睨む。

対する青年はデバイスを持つだけで構える事はしない。フェイト同様に油断する事なくデバイスを握り直す。

 木々が揺れ、静かに時間が過ぎていく。
互いに先手を踏み出すチャンスの到来を待つ。


「……ここで降参すれば、貴方にはまだ弁明の余地がある」
「降参…すると思うか?」
散弾銃を突き出し、銃口がフェイトを睨みつける。
そして、再び二人は膠着状態へと入った。


 一際強い突風に、フェイトの両結びした髪が暴れるようになびき、青年の髪が弄ばれる。

両者の間を通りすぎていく深緑の雪の数々。
視線を反らす事なく睨み合う。

――瞬間、二人の視線を遮る一枚の葉。

同時に踏み出し、止まっていた時間が劇的に加速した。

自分の得意とする近接戦闘へ持ち込むフェイト。

遠距離からの射撃を主とした青年は銃口を向けたまま後ろへ跳んだ。
その眼前をバルディッシュの頭が掠める。

「くっ……!」
 青年の放つ弾は直射型高速魔法。
至近距離からの回避を諦めたフェイトはシールドを張り、防ぐ。

高速機動による近接戦闘。
それが、フェイトの最も得意とする戦い方だ。


「はあぁっ!」
「ちっ…!」
ハーケンフォルムという、バルディッシュの先端に魔力刃を鎌の様に発生させた状態で切り掛かる。

巧みな回避行動で避けては直射弾を撃つ消極的な戦い方をする青年だが、それでもフェイトと互角だった。

(単調な攻撃…なのに、手強い…!)

(速いな…その上、力も中々ある…)

両者一歩も譲らず、戦いは平行線を辿る。



フェイトの一撃が青年を横から狙う。
だが、避けるどころかデバイスを叩きつけて止められた。

お互い手を打つにはあまりにも近い距離。

「くっ……」
「………」
ここぞとばかりにフェイトはバルディッシュに力を込める。
徐々に青年の脚がずれていく。
しかし、青年は片手で受け止めているのだ。

吹き飛ばされない様にと踏張っているが、段々と押され始めている。

 不意に青年の脚が止まった。フェイトの腹に右足を当て、蹴り飛ばした反動で宙返りしながら距離を置いた瞬間、更に数発の魔力弾を放つ。
体制を整えていない状態にも関わらず、フェイトは避けた。

「ちっ…管理局のエースは伊達じゃないか…」
憎らしく言いつつも、どこか楽しそうに聞こえる。

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あきゅろす。
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