魔法少女リリカルなのはLOST Battle
八ページ
《ぬぅあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!》
徐々にシールドを貫いていくシャドウの決死の一撃。黒い魔力刃は一点を突破していく。
《貫けぇぇぇぇぇっ!》
背面の翼が更に二枚、背面装甲の下部に生え荒々しく羽ばたいた。
完全に貫くと、魔力刃の先端に今まで貯めた膨大な魔力が収束されていく。
《INFINITE DRIVER!!》
シールドの内側から炸裂する暴れ狂う魔力の波に、最終防衛部隊は跡形も無く吹き飛ばされていった。
部隊が展開されていた箇所には深く抉り込まれた地面と、破損したカゲギリを突き出したまま固まっているシャドウだけが残されている。
《…………》
放出した魔力に耐え切れなかったカゲギリの先端は焼け切れていた。右腕も装甲の一部が剥がれ、火花を散らしている。
排熱を行い、ゆっくり右腕を下ろすとがら空きになった本部の防衛ラインで立ちすくむシャドウ。
目の前にはドクターの目標であった地上本部がそびえ立っている。内部に侵入し、破壊すればそれで終わるのだが。
《………何故》
シャドウには、その高揚感がなかった。
《何故俺は…》
見つめる先には、自分が作ったクレーターが出来ている。
《データに無い魔法を……?》
本来ケルベロスの純粋なるコピーであるシャドウが使える魔法は全てファルドと同様のはずだった。しかし、陸士部隊を一撃で壊滅させた先程の魔力放出はデータに無い。
《……》
それが信じられなかった。スペックは身体を改造すればケルベロスを超えられる。しかし、“何か”が負けていた。
《……俺は…オリジナルのコピーでなければ何なのだ…?》
素朴な存在理由の疑問。シャドウはライダーが居なくなり、ファルドを撃退した瞬間から妙な思考が頭に残っていた。
《……》
何気なく空を見上げる。透き通る青空が雲を流している。孤独な戦場に吹いた風は、何処か物悲しかった。
《…反応二つ…?誰だ》
センサーに引っ掛かった近づく反応が二つ。
振り向くと、ファルドとクルヴィスの二人がシャドウから若干離れた場所に降りていた。
「な……!」
「…化け物勢揃いってか」
《…オリジナル…ファルド・ヴェンカー…》
崩壊し、面影の無い地上本部に続く道を見た二人が呆然としている。だが、シャドウは無関心だった。
「シャドウ…そいつはお前がやったのか」
《……ああ》
「随分派手だな。そこに居た部隊はどうした」
《…分からん》
破損し、何処か様子がおかしいシャドウにケルベロスを構えながらファルドは歩み寄る。
突き出された左手を見ながらも一歩も動かない。
「……どうした」
《…分からん》
普段ならその場でファルドに切り掛かっているシャドウが全く動かない。ケルベロスで頭を軽く突くが、反応しない。
武装が壊れていても、本来ならば任務を優先するはずのAIは機能しなかった。データでは無い“何か”がそれを邪魔している。
「…おい」
《……》
「お前、どうしたんだ一体…」
《…ファルド、お前こそどうした。以前までなら俺をこの場で破壊しているだろう》
「……ファルド一佐、ちょっとまずい話です」
「どうしたクルヴィス」
「…防衛部隊が半壊。敵戦力の二つがこっちに一直線で来てます」
「何?」
その直後、ファルドに通信が入った。相手はチンク。
『すまないファルド殿!敵を一体逃してしまった。姉の失態だ…』
「謝る前にこっち来い。どいつ逃したんだ」
『バスターだ!すぐそちらに向かう!』
「よりにもよって厄介な…!」
「可愛い子ですね」
「茶化すなタコ!」
シャドウはまだ呆然としていた。ファルドはクルヴィスを蹴飛ばした後、肩を叩く。
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