魔法少女リリカルなのはLOST Battle
七ページ
ガシャン、と瓦礫の山に落ちた方向目がけてファルドはケルベロスのガンスタイルを向ける。
MCSを全開で起動させて狙いを定めて引き金に指を掛けた。
「ケルベロス、遠慮はいらんからぶっ飛ばせ」
《分かりました》
「バスターカノン!」
銃口から想像出来ない極太の黒い魔力砲が瓦礫もろとも全て破壊し、反動でファルドが後ろに転んだ。仰向けのまま爆発音と吹き飛ばした瓦礫が再び崩れる音を聞き、クルヴィスはその様子を見ている。
「…いい加減体力が限界だ」
「そうですね…本部側はまだ保っていますが」
しばらく様子を見ていたが、動きは無い。今頃瓦礫の下敷きになっているだろう。
「アイツが動かない内に本部側の援護に行くぞ」
「了解です」
二人は一度背中を向けて本部に向かって走り始める。
あまりに距離があるため、ファルドはクルヴィスの手を掴み空を飛んで移動した。
――瓦礫が無数に転がる市街の一角に、魔力の吸収音が虫の鳴き声の様に響き続けている事に気付く人間は居ない……。
《くっ!邪魔をするな貴様等!》
シャドウは本部の最終防衛ラインで足止めをされていた。陸士部隊も総員で防衛に当たり、魔力の雨を避けるので流石のシャドウも思う様に動けずにいる。
「くそ…なんて奴だ!これだけの射撃の中を避けるなんて!」
《地上本部は目前だと言うのに…!》
左手からの射撃で反撃をするが、狙われた局員は的確に防ぐ。
魔力は周囲に溢れている為困る事は無い。
《ライダー…お前が残って居れば…この包囲陣を突破出来たモノを…!》
―《俺が信用出来ないか?》
―《心配するな。必ず戻る》
全て自分の失態が原因だった。ファルドを自らの手で倒す事に執着した結果、大破してそれを助けに来たライダー。
《……くっ!》
修復の為に一度撤退を余儀なくされ、たった一人で残った。
そして、仲間の為にその役目を終えてしまう。
あまりにも早い仲間の損失。シャドウのメモリーにはそれが深く刻まれている。
不要だと言って預けた赤いマフラーは、形見となってしまった。シャドウはそれを握りしめると、カゲギリを構えて防衛ラインへたった一人で突撃する。
《戦友の仇は、取らせてもらうぞ…管理局っ!!》
地を走り、自分を狙う射撃の中を巧みに避けながら防衛ラインの突破を目指す。
盾の役割を充分に発揮しながら破損していくたった一つの武装。
《まだだ…!まだ保てっ!》
「集中しろ!奴を絶対に通すなぁ!」
《貴様等、程度に…!》
シャドウは始めて自らのMCSを起動させた。背面の装甲と両腕の装甲の一部が開き、魔力を吸収する。
《俺の覚悟が……!》
「なんだあれは…黒い翼…?」
吸収された魔力がひし形の羽根を形作り、シャドウの背中から生えていた。
両腕の肘からも魔力が鋭い突起を作っている。
《負けて、たまる物かぁぁっ!!》
紅い相貌が一際強く輝く。
一段と加速した瞬間盾の役目をしていたカゲギリが破壊された。しかし、まだ剣としての役目は終えていない。
《おぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!》
中央から二つに別れたカゲギリの中心に黒い魔力刃が現れる。シャドウはそれを突き刺す様に構え、ひたすらに加速した。
「魔力反応増幅!?まだ上がるだと…!総員防御態勢!!」
《ZERO DRIVE!!!》
何層にも重ね合わせた最終防衛部隊のシールドに突き刺さる魔力刃。直視出来ない程強い火花が散り、拮抗していた。
MCSの魔力吸収はまだ続いている。
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